2020年もゲーム業界には大注目 クラウドゲーム e-sports など

ゲーム

はじめに

2019年は日本のゲーム業界にとって激動の年でしたね。

グーグルやアマゾン・ドット・コムなど米IT(情報技術)大手がクラウドを使ったゲーム事業への参入を表明。

ソニーや米マイクロソフトなどの専用機メーカーもネットサービスの強化を打ち出すなど、主戦場がネットに移りつつあることを示す動きが相次ぎました。

各社の昨年2019年の動きを復習してみましょう。

クラウドゲーム、米グーグルなどが参入

米グーグルは3月、クラウド型のゲーム配信サービス「スタディア」を始めると発表した(米サンフランシスコ=ロイター)

米グーグルは3月、クラウド型のゲーム配信サービス「スタディア」を始めると発表しましたね(米サンフランシスコ=ロイター)

19年はクラウド側で情報処理をする「クラウドゲーム」に注目が集まりました。

11月には米グーグルがクラウドゲームのサービスを開始。

巨大IT会社の参入を前に、負けてらんないライバル同士のソニーと米マイクロソフトは5月、クラウドゲーム分野で提携すると表明しました。

20年春から商用化が始まる次世代通信規格「5G」の目玉コンテンツとして今後さらに市場が盛り上がることは間違いないですね。

グーグルは「Stadia(スタディア)」と呼ぶクラウドゲームサービスを欧米14カ国で始めました。

日本でのサービス開始時期などは現時点で明らかになっていません。

ゲーム専用機がなくても、本格的なゲームをネットにつないだテレビなどで楽しめます。

基本料金は月額9.99ドル(約1088円)で、ゲーム毎に追加料金を支払う仕組み。

クラウドゲームは、専用機や画像処理性能に優れた高価なゲーミングパソコンなどが不要となります。これが何よりのメリット。

ゲーム上でプレーヤーが操作した情報をクラウド側に送り、そちらで処理、データの保存を行います。

ストリーミングでデータのやり取りを行うため、端末にゲームソフトをダウンロードする必要もないのです。

ネットにつながるテレビやスマホなどの画面があれば端末の処理能力などの制約を受けずに高品質なゲームが遊べます。

先行してクラウドゲームのサービスを始めていたソニーと、実験を進めていたマイクロソフトはグーグルに対抗するため手を組みました。

ソニーは「プレイステーション(PS)」、マイクロソフトは「Xbox」とそれぞれゲーム機を展開しており、ライバル関係にあるんですけどね。

ただ競争が激しくなる中、それぞれのブランドは保ったまま、インフラ部分での協業を決めたのです。まあ簡単に言えば、それだけグーグルがすごいってことでしょうか。

「東京ゲームショウ2019」には大勢のゲームファンが集まった(9月12日午前、千葉市美浜区の幕張メッセ)

「東京ゲームショウ2019」には大勢のゲームファンが集まりました(9月12日午前、千葉市美浜区の幕張メッセ)

ソニーは10月からクラウドゲーム「PSナウ」の月額料金を半額にし、グーグルと同価格帯にそろえました。

PSナウは「PS4」向けのサービスとして14年に始め、16年からはパソコンにも対応しています。

「PS3」向けのゲームなど旧作800作品を配信していましたが、値下げとともにPS4向けのヒット作品も遊べるようにしました。

ゲーム毎に追加料金が発生し、サービス開始直後で作品数も少ないグーグルを迎え撃つかたち。

PSナウは欧米など19カ国で展開し、10月時点で会員数は100万人を超えました。

日本国内でもクラウドゲームの普及へ機運が高まっています。

ソフトバンクは米エヌビディアの提供するクラウドゲーム「GeForce NOW(ジーフォースナウ)」の国内での試験配信を20年2月末まで最大1万人を対象に実施しています。

ソフトバンクとの通信契約がなくても遊ぶことができるようになっています。

5Gの目玉コンテンツに育てたい考えです。

KADOKAWA Game Linkage(東京・文京)の推計では、18年の国内のクラウドゲームの市場規模は11億円。22年には約10倍の126億円に成長すると予測しています。

20年春から商用化が始まる5Gは大容量のデータを低遅延でやりとりできます。

スピードが重要なアクションゲームやシューティングゲームでは低遅延がネックとなり、Wi-Fiなど安定した通信環境での利用を想定していました。

ただ、5Gが始まれば気軽にスマホで外出先からクラウドゲームを楽しめるようになるため、5Gの通信網と端末が普及すれば一気に広がる可能性があります。

任天堂、試される「王者」の実力

任天堂は携帯専用の「ニンテンドースイッチライト」を発売。国内外でヒットを呼んだ(公開動画より引用)

任天堂は携帯専用の「ニンテンドースイッチライト」を発売。国内外でヒットを呼びましたね

任天堂にとって19年は主力のゲーム専用機で大勝負に出た1年となりました。

9月には新しい携帯型の「ニンテンドースイッチライト」を発売。

お膝元の日本市場だけでなく、携帯機”不毛の地”とされる米国でも大きな人気を呼びました。

発売3年目の「ニンテンドースイッチ」ではゲーム大国・中国に再進出。

据え置き、携帯型で統一した「スイッチ」のブランド力を磨きます。

スイッチライトは従来のスイッチよりサイズを7割に小さくし、テレビへの接続機能などを一部省いています。

価格も世界的に1万円程度低い携帯専用端末としました。

9月20日の発売初日には都市部の大型家電量販店に朝から多くのゲームファンがつめかけ、2カ月で国内販売が62万台(ゲーム情報誌「ファミ通」調べ)と年末商戦に向けた大きな目玉の1つに躍り出ました。

うれしい誤算もありました。任天堂にとって最大市場の米国ではもともと日本に比べて自動車で移動するケースが多く、移動中には遊べないためゲーム機を外に持ち歩く習慣がありませんでした。

ゲームはテレビにつないで遊ぶスイッチを含めて据え置き型やパソコンゲームが一般的でしたが、

「すでにスイッチを持っている人が2台目として買うなど多様なニーズに対応できている」と古川俊太郎社長は語っています。

今月10日にはスイッチを中国で発売。

同国ゲーム最大手の騰訊控股(テンセント)と正規販売代理店契約を結び、過去2回の失敗の教訓を生かした「三度目の正直」に挑んでいます。

価格は2099元(約3万2千円)。

中国のゲーム市場はパソコンやスマホ向けが主流で、このうちゲーム専用機のシェアは1%未満ですが、テンセントの後ろ盾を得てほぼゼロからの開拓に挑んでいます。

10億人の顧客基盤をもつ同社の対話アプリ「微信(ウィーチャット)」の機能など、両社が展開するサービスを組み合わせて利便性を高めていく方針。

スイッチ向けのソフトをネット販売する「ニンテンドーeショップ」に「微信支付(ウィーチャットペイ)」を連携させるといったことです。

購入後1年間の保証など日本と同様のアフターサービスも展開するといいます。

エース経済研究所の安田秀樹シニアアナリストは任天堂の中国本格進出について、

「アジア市場全体で存在感を示す上でもインパクトがある」

と指摘。

ゲーム機の販売だけでなく「スーパーマリオ」や「ポケットモンスター」など任天堂が注力するIP(知的財産)ビジネス分野にも波及効果が見込めそうですね。

かつて会見でスイッチの販売戦略について問われた任天堂の古川社長は、

「まず一家に1台買ってもらい、1人1台に近い需要を作り出していきたい」

と語りました。

新型機投入に最後の大市場開拓。

スマホやクラウドゲームが攻勢をかけるなか、20年は「家庭の娯楽」を築いた王者の底力がいっそう試される1年になりそうです。

新型機で迎え撃つソニー・マイクロソフト

マイクロソフトはゲーム事業で専用機とストリーミング配信の両方に力を入れる(6月9日、米ロサンゼルス)

マイクロソフトはゲーム事業で専用機とストリーミング配信の両方に力を入れています(6月9日、米ロサンゼルス)

ソニーのゲーム子会社、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)と米マイクロソフトは家庭用ゲーム機の次世代機を2020年末の商戦でそれぞれ投入することを表明しました。

19年に新型機を発売し先行した任天堂を追撃します。

ネット接続した専用機からクラウドゲームを利用できるようにするなど、各社がハードに注力する姿勢は揺るぎません。

ソニーは「プレイステーション(PS)」の次世代機「PS5」を20年末の商戦に投入。

高精細映像の「8K」に対応し、ゲーム内の触感や衝撃をコントローラーの振動で再現。

仮想現実(VR)ゲームが楽しめるヘッドマウントディスプレー「PSVR」にも対応し、ゲームへの没入感を重視。

マイクロソフトも「Xbox」の次世代機を同時期に発売予定です。

eスポーツ、企業の支援相次ぐ

10月の茨城国体では文化プログラム事業としてeスポーツが開催された

10月の茨城国体では文化プログラム事業としてeスポーツが開催されました

19年はゲーム対戦競技「eスポーツ」が拡大。

有名企業が大会に協賛する動きが相次ぎ、プロ選手やスタッフを育てるスクールの生徒募集が始まりました。

国体でも初めてeスポーツが開催されるなど裾野が広がっていますね。

eスポーツは海外で普及が先行。

オランダの調査会社ニューズーは19年の世界市場は前年比27%増の11億ドルで、22年には22億ドルになると予測。

観客の中心は主に10~20歳代の若者で、大会スポンサーには若年層にアピールしたい米ナイキや独BMWなどの大手企業が名を連ねます。

この流れが日本にもようやく波及してきました。

トヨタ自動車は3月にeスポーツに本格参入すると表明してレースゲームの大会に協賛。

三井住友銀行も1月に開催されたeスポーツ大会で冠スポンサーを務めました。

業界をめぐる環境が大きく変わる中、将来の顧客となる若年層との接点を作る狙い。

業界団体の日本eスポーツ連合(JeSU)にスポンサーとして参加する企業も増えています。

市場を支える環境整備も始まっています。

コナミホールディングスは大会開催や人材育成のための複合施設「コナミクリエイティブセンター銀座」を12月に竣工しました。

20年4月に開校するスクール「esports 銀座 school」では外部講師を招いてプロ選手や実況解説者、配信技術者、大会運営者などを育てます。

関連製品の需要も高まっており、家電量販店のビックカメラでは高度な映像処理機能を備えた「ゲーミングパソコン」の売り上げが前年同月比で3割伸びた月もありました。

eスポーツによる地域活性化を目指す動きも出始めました。

10月には茨城国体の文化プログラムとして「全国都道府県eスポーツ選手権」が初開催。

全国の予選を勝ち抜いた代表がサッカー、レーシング、パズルのコンピューターゲームで対戦して注目を集めました。

茨城県は関連産業の拠点の形成やeスポーツを楽しめるリゾート形成などを目指す方針を示しています。

北海道経済産業局も10月、eスポーツを使った地域活性化などを議論するビジネスミーティングを開きました。

ゲーム市場、2020年も大注目です。

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