子どもの看病手放さない 正面から向き合う働き方模索

私は育休を積極的に夫婦ともにとるべきだと考えていますが、夫婦は共に働き、共に育児や家事をする――。この意識は、ここ何年かでずいぶんと普及したのではないでしょうか。

今回も面白い記事を見つけましたのでご紹介させていただきます。

紹介する浅井有美さんは、フィンテック企業で働く2児のママ。まさに新しい時代を担うであろうこれからの会社ですよね。彼女はその働き方に合わせるのではなく、時短から「業務委託」へと転向したり、「子どもの看病」をアウトソースしたりしない方法を模索したりと、これまで自分にフィットする働き方をフレキシブルに選択してきました。浅井さんの「仕事と育児を両立させる姿」には、新たな生き方が反映されています。

◇  ◇  ◇

■出産前と同じ「アウトプット」を目指し、働いてきた

「出産を経験するたび、私は、これまで知らなかった新たな自分の一面を知ってきたような気がします。今、戸惑っているのは、二度の出産を経て、自分の中の『母親のウエート』が大きくなっていることです。それによって、私の『働き方』は大きく変わりました。」

彼女が長男を妊娠したのは、イベント企画会社に転職して3年目。当時は、営業も企画も何でもやるプロデューサーとして、サミットやモーターショーなどの大型プロジェクトにも関わり、仕事中心の生活を送っていました。「あと一山越えたら、もっと仕事が面白くなりそう」。まさに、そんなタイミングでの妊娠・出産でした。

入れる保育所を探す「保活」に敗れて1年半後の仕事復帰となりましたが、それからは、限りある時間を有効に使い、出産前以上に成果に固執するようになりました。結果として、生産性や営業成績を上げることができ、時短勤務ではなく、より自分の仕事の成果を実感できる「業務委託」として働くことを選びました。

自分でこのように働き方を提案して受け入れてくれる会社ってどんだけ素晴らしい会社なんでしょう。フィンテックというだけあって、新しい会社なのでしょうけど、素晴らしいことですね。

私には決してできないし、したくないですが、彼女はいかに子どもがいないときと同じアウトプットを出すかを重視し、夫に子どもを任せて、それ以前と同じように海外出張もこなしてきたそうです。すごいですよね。私にはそんなことできませんし、人生損している気がします。子供といる時間が一番大切ですし、もう一生戻ってこないのにもったいないなと思ってしまいます。仕事なんて代わりはいくらでもいるんですよね・・・。

ただ、彼女は、第2子を妊娠してからは、そうはいきませんでした。仕事をしながら長男の子育てもして、さらには、ひどいつわりに悩まされていたんです。両親は遠方でサポートも受けられず、初めて、「もう手いっぱいかもしれない」と思ったそうです。

イベント運営の仕事は大好きだった彼女ですが、これまでのような労働集約型の働き方を続けていくことは現実的ではありませんでした。

彼女はその後転職し、転職後も、時間の制約を理由にすることなく、最大限のアウトプットを出していこうという姿勢に変わりはありません。

すごすぎますね。ここまでの仕事人間がいるんですね。子供が二人もいて、転職するということもすごすぎます。

ただ、一方では、彼女は二人の子どもを育てながら働く大変さもひしひしと感じていました。その大変さに比例するように、私の中の「母親のウエート」が、むくむくと大きくなっていく実感があったそうです。

そりゃそうですよね。私なんて子供が1人できただけでも随分と変わりましたから。

■もう、「看病」をアウトソースしたくはない

こうした彼女の価値観の変化は、今年の冬、彼女以外の家族全員がインフルエンザにかかったタイミングで、あらわになりました。

以前の彼女であれば、会社を10日間も休むなんて考えられませんでした。きっと、「今日は、夫に子どもたちを任せて私が仕事に行くね。明日は病児保育かベビーシッターさんにお願いしよう」と、割り切れたはずだと思うのです。

ですが、このときの彼女にとって、子どもの看病をアウトソースすることは、とても「心地のいい選択」とは言えなかったそうです。

「ママがいい!!」と泣く子どもを残していくことに罪悪感があるとか、「母親はこうあるべき」と思い込んでいたとかそういうことではなく、純粋に、病気の子どもを置いて仕事に行くことが、そのときの彼女には、フィットしなかったのです。

私はフィット云々以前に、子供が病気なら何が何でも仕事は休みます。

正直、彼女は戸惑ったそうです。「あれ? 私ってこんなタイプだったかな」と(笑)。

ただ問題は、自分にとって「心地のいい育児」をすることが、他人に負担をかけてしまうこととイコールだったことだそうです。彼女はそれはあってはならないことと思いました。そう自覚した以上、「もう、この仕事を辞めなくてはならないだろうな」と考えていたそうです。

職場のチームで、子どもがいるのは彼女だけだったのも大きかったそうです。彼女が20代の頃は、時短で働く人のことを「早く帰れていいなあ」くらいにしか思っていなかったので、20代で子どものいないメンバーに、このときの彼女の心境の変化を想像し、理解してもらおうとすること自体、「おこがましいのではないか」という気持ちがあったそうです。

そんな複雑な思いを抱えて、彼女は10日ぶりに仕事復帰しました。

「すみませんでした」と頭を下げる私に、みんなは「いいよいいよ」と言ってくれましたが、それでも休んでいた事実がなかったことになるわけではありません。どこかぎこちない空気はそのまま残っていて、それでも彼女としては、ただ謝ることしかできませんでした。

そんなとき、20代のあるメンバーから言われたのが、「私は、浅井さんに謝ってもらいたくないんです」という一言だったそうです。

彼女はこのとき、ハッとしたそうです。このときまで、会社には自分以外にも、いろいろな事情を抱えている人がいて、みんながそれぞれにチームとして働いているということを気が付かなかったそうです。そして、何より、同じチームで働く仲間たちにとって彼女は、自分が母親になったときの姿そのものだったんです。その事実を、彼女はこの言葉によって初めて知ることになりました。

■あえて気持ちを共有するから、心地よく働ける

彼女がいま働いているfreeeという会社には、「あえて、共有する」という行動目標があります。これは、言わなくてもいいと思っていることでも、あえて共有することで、仕事上のコミュニケーションがよくなり、意見の吸い上げや、意思決定のスピードも上がるという意図で掲げているものです。あえて共有することで、人間関係は深まっていくという考えが、その根底にはあります。

これはおもしろいですね。ありきたりなようで、なかなか無い行動目標ですよね。

そこで、天気やランチなどの無難な会話に集約されがちな社員同士の会話を深めるべく、毎週、マネジャーに自分の価値観や悩み、家族のことを話す「weekly 1 on 1」という時間を設けているそうです。

私は、職場ではみな「演者」だと思ってます。つまり、プライベートの自分と職場の自分が同じ人なんて皆無だと思っています。私がそうだからというのもありますが、プライベートの自分をそのまま職場でみんなが出したら、仕事って成り立たないと思いませんか?なので、プライベートのことをあれこれ誰にでも話すのはどうかと私は思うんです。

ただ、彼女もそれまでは、そこで自分の子育てや母親として考えていることなどプライベートを語ることはしてきませんでした。やっぱり、子どもがいない人にはピンとこない話だと思っていたからです。

ですが、インフルエンザの一件から、彼女は、そうしたプライベートなことも、共有するよう心掛けるようになりました。

例えば、freeeでは、社員のベビーシッター費用を半額負担してくれるんです。それだけにみんなとしては、なぜ、彼女が自分がインフルエンザになったわけでもないのに、家族の看病をアウトソースしないのかが理解できないはずなんです。やっぱり、それを分かってもらうには、彼女の母親としての価値観も共有しなければならないですよね。

彼女は上司であるマネジャーにも相談。すると、「仕事のやり方を変えるしかないよね」と言って、タスクを細分化し、持っている仕事を本当に実務レベルまで落とし込むことを提案されたそう。それによって、いざというときにマネジャーが、その仕事を誰に振るべきか考えられる体制ができるからです。

こうして担っている仕事を見える化することになったのは、彼女だけではありません。いつどこで、誰が仕事ができない状況になるのかは分かりませんから、常にチーム全員の仕事を、週一のミーティングで共有するようになりました。こうして母親としての自分の価値観と仕事を、擦り合わせていったのです。

■「リモートで頑張ろう」は、自分の達成感のためでしかなかった

腹を割ってチームで解決策を話し合う中で、休んでいる彼女にチームが求めていることが「何か」ということも明確になったそうです。

インフルエンザで休んでいる間、彼女は「ここはできるのでやります」と言って、自分にもタスクを残してもらう方法を採ってきました。しかし、実際のところ、昼間に子どもの看病をしている彼女が仕事をするのは夜ですから、結果として、日中に働くチームのみんなとはタイムラグが生じて、チーム全体としての仕事の進捗は遅くなっている現状があったのです。チームのメンバーからも、「リモートでやってもらわないほうが楽です」と、はっきり言われたそう。

リモートワークで仕事をすることには弊害もあって、それは、家でも仕事ができてしまうから、無理にでもやろうとしてしまうことだと思います。それは結局、休んでいる彼女の達成感のためでしかないことも多いと思うんですね。

それに、リモートでのコミュニケーションは、隣にいるのとは違って、普段なら聞けることでも遠慮して聞けないということも頻繁に起こります。共有できる情報量を少しでも増やすためにも、今は、リモートに頼らず、できるだけ出社しようと彼女は心掛けているそうです。

■ごめんね、よりも大切な「ありがとう」を心掛けたい

子育てをしながら働いていると、彼女のように、誰に対しても謝ってばかりいる時期があると思います。そうした時期は、仕事ではもちろん、子どもに対しても「迎えに来るのが遅くなってごめん」などと謝りがちです。

そんな彼女に、保育園の先生が「お母さん。『ごめんね』ではなく、『今日も楽しんできてね』『今日は楽しかった?』と言って、ニコニコ迎えてあげてください」と言ってくれました。彼女が謝ってばかりいるから、息子も不安になるのだと教えてくださったんですね。

いろいろなアドバイスをもらえる彼女は、本当に周りの人に助けられていますよね。つい先日も、20代のメンバーから、琴線に触れる言葉をもらったそう。

それは、「浅井さんはすべてを完璧にしようとして、それが人生の完璧だと思っているかもしれない。でも、実は、60のものが集まって一つになったほうが、完璧な人生なのかもしれないですね」というものです。

これはそのとおりですよね。仕事はそもそも完璧を目指しちゃいけませんしね。

自分とは違う環境にある相手の立場を、どうしてこんなふうに想像できるものかと不思議に思ってしまいます。私にはここまでは無理です絶対。でもやっぱり、どんな人に対しても、「ごめんね」ではなく、「ありがとう」と伝えることが大切なんですよね。当たり前のことではありますが、改めてそんなことの大切さを、私も強く感じられるようになりました。

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