フリーマーケット(フリマ)アプリ最大手のメルカリがテクノロジー活用に力を注いでいます。「マイクロサービス」と呼ぶ開発手法を全面採用し、継続的なサービスの強化と変化に強い組織づくりを目指します。今日はその記事をご紹介♪
メルカリは人工知能(AI)の活用も積極的に強化し、利用者向け機能からシステム開発、従業員の日常業務まで効率を引き上げます。不正利用を防ぎ、信頼されるテックカンパニーに成長できるでしょうか。私は可能性は大いにあると考えます。
最近は2019年6月期の通期連結決算が137億円近い赤字だと発表がありましたね。でも、国内でのフリマアプリ事業は黒字でした。さらに、赤字の原因というのは、AI人材の採用、米国事業、モバイル決済サービス「メルペイ」などへの投資がかさんだことが影響したため、ということなので、それほど悲観する内容でもないかなと私は思っています。
具体的な数字を見ていきましょう。
■利用者数は4年前の15倍に
メルカリの売上高は3年間で3倍に増え、月間利用者数は4年前の15倍、従業員数は2年前の3倍になっています。
その歴史を見てみますと、2018年6月に東証マザーズに上場、19年2月にはスマートフォン決済サービス「メルペイ」を始めましたね。14年には米国事業に進出しています。19年は認知度やブランドイメージの向上へ投資を増やしています。
ただ、急成長する一方、経営幹部や社員の中には先行きへの危機感が広がっています。事業強化や意思決定のスピード、サービスの使い勝手や品質――。サービスを動かすシステムの構造が複雑になり社員数が増え続ける中、これまでの勢いを維持できるのか不安なようです。
マイクロサービスの導入を率いる名村卓CTOは、 「今のままエンジニア数が1000人を超えたらメルカリのアーキテクチャーは崩壊しかねない」。と語っています。17年初夏、最高技術責任者(CTO)を務める名村卓執行役員は山田進太郎会長兼最高経営責任者(CEO)と同社の先行きを議論しました。
当時のエンジニア数は100~120人。山田会長は1000人を超えるのは20年ごろとみていました。ちなみに、18年10月時点のエンジニア数は350人となっています。
組織としての停滞を回避し「世界的なマーケットプレイス」になる目標を達成するため、メルカリはテクノロジーに活路を見いだしています。目指すは「日本を代表するテックカンパニー」。18年6月、マザーズ上場の記者会見で山田会長はこう宣言しました。
なんと、GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム)が目標であり想定するライバルとしています。 さらに、製品やサービスの水準でGAFAを目指すだけではありません。浜田優貴取締役最高プロダクト責任者(CPO)は、「エンジニアのスキルでも差異化し、システム開発などに関する新たな技術を生みだせる企業を目指す」と意気込んでいます。
■マイクロサービスを全面導入
テックカンパニーを標榜するメルカリが具体策として取り組むのがマイクロサービスアーキテクチャーの全面採用。
●ところでマイクロサービスってなに??
巨大なアプリケーションを細かな要素に分割し、それぞれ独立して開発したり運用したりする手法です。一つひとつの要素をサービスと呼びます。GAFAをはじめとする世界のIT企業がこぞって採用していて、国内でもネット企業を中心に広がり始めています。
名村CTOは2年前に山田会長に危機感を訴えた際、解決策としてマイクロサービスの導入を進言しました。「品質や堅牢(けんろう)性を保ちつつ、変化に強いシステムを実現できるのが利点。相反する特徴を共存させられる」と語ります。
浜田CPOはマイクロサービスなどを通じて目指す組織像を、「大企業病にかかりにくい状態」と表現しています。自社の急成長を大企業病にかかるリスクと背中合わせと捉え、それを回避しようとする危機感の表れなのでしょう。
名村CTOの指揮下、メルカリは17年秋ごろにマイクロサービスの導入を始めました。「出品」や「検索」といったフリマアプリの機能単位でサービスを分け、個々のサービスの開発からテスト、デプロイ(コードの配置作業)、運用、障害対応までを原則として各チームが受け持ちます。
従来のシステムの構造を一言で表現すれば一枚岩。LAMP(Linux=リナックス、Apache=アパッチ、MySQL、PHP)と総称される基本ソフト(OS)や言語、データベースで要素技術を統一した「教科書通りのベーシックなアーキテクチャー」。組織については開発やテストなどの工程単位で構成していました。開発を終えたらプロジェクトが解散するため、責任の所在があいまいになることがありました。
■技術者の意識変革へ荒療治
マイクロサービスを導入するうえで、メルカリが組織構造の見直しと表裏一体で進めているのがシステム基盤の見直し。具体的にはアプリケーションとミドルウエアをひとまとめにする「コンテナ」技術を活用し、サービスの開発からテスト、デプロイ、運用まで一連の作業をクラウド上で展開。オープンソースソフトウエア(OSS)のコンテナ管理ソフト「Kubernetes(クバネテス)」を使い、サービスごとにコンテナを管理します。
マイクロサービスに沿って開発した個々のサービスは、API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)経由で互いに呼び出します。APIを一元管理するシステム「APIゲートウェイ」を開発し、既存のモノリシックなシステムもサービスの1つとして呼び出せるようにしました。
メルカリが掲げる企業ミッションの1つが「Go Bold」、直訳すれば「大胆にやろう」です。
同社のIT(情報技術)エンジニアにとって一枚岩的なアーキテクチャーから、マイクロサービスアーキテクチャーへの移行は、まさにGo Boldの挑戦といえますよね。
大胆さを企業ミッションに掲げているとはいえ、社員が2年間で3倍に増えれば理解度に濃淡が生まれてもおかしくありません。 「ある程度の強制力が必要だ。どちらでもよいとなれば、今のやり方が早いと現場は考えるだろう」。と、名村CTOらは語ります。そこで、名村CTOは荒療治に出ました。
「18年12月にコードをフリーズします」。18年4月に名村CTOは社内にこう宣言。当時の一枚岩的なシステムに対する機能の追加や仕様の変更を、12月をもって凍結するとしたんです。セキュリティーなどの問題を除き、既存のコードはもう変えない。変えるならマイクロサービスで、というわけです。エンジニア1人ひとりと対話も重ね、マイクロサービスを少しずつ浸透させていったんです。
企業を良くするには、大胆さやスピーディーさが必要ですね。
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