少子高齢化が進み、人手不足が深刻化するばかりの昨今。この空前の売り手市場に、企業は現社員の囲い込みに必死ですが、なかには抱えていたくないような問題社員もいるのが事実。職場で問題児となっている問題社員を解雇したい場合、どういった対応が正解なのでしょうか。今回はそのようなことをテーマに書いていきたいと思います。
モンスター社員
あなたの職場には、自分勝手で同僚の批判ばかりする、経営陣を面と向かって罵倒する、業務命令に従わない、始末書の提出を命じても提出しない・・・などといった行動をとり、職場で問題児になっている社員はいないでしょうか。万が一このような問題社員が職場にいたら、経営陣は解雇を検討したくなることでしょう。
私もさすがにここまでの人は十数年のリーマン生活で見たことがないです。居たらそれこそ大問題でしょう。でも、これからの時代、そういう人が出てきてもなんら不思議ではないと思います。
私の税務署勤務時代の話
ただ、私はモンスターとまではいきませんが、税務署時代に、業務命令に従いたくなく、間接的にしかるべき部署に訴えたことはあります。ちゃんとしたルートなのでモンスターではないですが、参考までにお話しさせてください。
税務署勤務が1年くらい経った際、税務署長が新しい人に代わったんです。そこでその税務署長が何を思ったか、とある本を指定してきて、
「この本を買って、いついつまでに読んでください。そのあと皆で感想を話し合ったりする会を開きます」
と。
あなたはどう思いますか?私はそれがどうしても嫌で我慢できませんでした。20代半ばくらいです。
「なぜ、自分の読みたい本ではなく、勝手に指定された読みたくもない本を、しかも自分のお金で買って、皆で話し合いをしなければいけないんだ」
と。
そして私がどこに訴えたかというと、もちろん匿名ではありますが、監査室のようなところにメールをしたのです。「署長がこうこうこのようなことを命令してくるのですが、パワハラだ」と。
確かに、15年くらい前なので、今ほどハラスメントに対しては敏感な世の中ではありません。しかし、私はそれがどうしても嫌で我慢できませんでした。20代半ばくらいです。
おそらく、保守的の日本代表の公務員ですから、そのようなことを言う人は皆無。みなただ何も考えずに従うだけの思考停止ロボットのような人たちばかり。私のそのような主張は至極珍しかったことでしょう。監査室も驚いたことと思います。
結果的に、どうなったかというと、
無くなりました
確か、訴えてから数日経った際に、署長か誰かからメールが来て、「諸事情により開催は中止します」とのことでした。私は内心喜びましたね。公務員だから絶対動いてくれないし、中止にするのは難しいんじゃないかぐらいに思っていましたが、気持ちを汲んでくれたことはありがたかったです。
今の会社にも、どんな会社にも、そのようなことを言う機関はあるはずです。無かったらブラックです。私からしたら、
「なぜ少しでも、不満や悩みや、問題がある社員のことについて匿名で訴えたりしないのかな」
と不思議でありません。言わないと何も変わらないのに。自分が我慢しても結局何も良いことはありません。ただ、会社にこき使われるだけの奴隷と同じです。会社にいるんですから、自分も逆に会社の制度をどんどん利用しなければ意味がありません。
ボイスレコーダー
さて、話は本題に戻ります。
問題社員が先ほどような行動をとった場合に、経営者が感情的になり、「クビだ」などと簡単に言ってしまっては、かえって会社に不利になります。
今の時代、「パワハラだ」と訴えられて大問題になること請け合いです。
そして、実際に「クビだ」と言って解雇してしまえば、その問題社員は、「解雇は不当で無効であり、会社に出勤できない間の賃金を払え」と言って、裁判所に労働審判の申立をするでしょう。
労働審判では、審判(決定)まで行ってしまえば、ほとんどの場合、解雇は無効ということになります。
また、和解をする場合でも、給料の6ヵ月分や、ひどいときには1年分を払って和解することになります。
これは多くの場合、
- 社員が問題社員であることの証拠が乏しい
- まずは、戒告、減給、出勤停止などの軽い懲戒処分を取るべき。いきなり解雇することは認められない
とされているからです。
したがって、問題社員がいる場合は、問題行動のあるたびに、その行動を詳細に文書に残しておくことが必要です。しかし、今の時代はなんといっても、
ボイスレコーダー
です。文書に残したところで決定的な証拠にはなりません。本人がそんなこと言っていないと主張すれば証拠とするのは難しくなり、泥沼化する可能性もあります。
一方、ボイスレコーダーなら逃げ道はありません。タイミングなどは難しいかもしれませんが、今の時代、専門のボイスレコーダーを買わなくても、だれでも持っているスマホがあります。そのスマホのアプリを使うんです。タップすれば一発起動。有料のものなら無料のよりさらに優秀で使い勝手が良いものは沢山あります。
ある社員が、ほかの社員の問題行動を認識している場合は、報告書という形で、詳細な事実を報告させる方法もありますが、トラブルを恐れてもみ消される恐れも大きいです。だったら、私は先ほどのように匿名でしかるべきところに訴えます。何もしてくれない限り何度でも訴えればいいんです。そしてもちろん、問題社員と直接話をする機会がある場合には、ボイスレコーダーを使うのも効果的です。
また、いきなり解雇ということは避けて、まずは戒告、それでも問題行動が改まらないような場合は、さらに戒告、あるいは減給、出勤停止などの処分をするのが順序というもの。何度か軽い懲戒処分をした後に解雇をすれば、労働審判でも解雇が認められやすくなりますし、和解になった場合でも和解金が少なくなります。
さらに言うと、問題社員にもプライドがありますし、そういう人に限って無駄にプライドが高かったりする可能性は大きいです。また、人間というのはストレスに弱いものなので、戒告、減給、出勤停止などの懲戒処分がくり返し行われると、自分から辞めていく可能性が非常に高くなります。問題社員が退職すると言った場合には、すぐに退職届を出してもらいましょう。
ある社員を辞めさせたい場合の意外な方法
これに関しても面白い情報があるんです。ある社員を辞めさせたい場合はどうすればいいと思いますか?仕事を異常に与えてアップアップにさせて「もう無理だ」ってさせて辞めさせるのが良いと思いますか?
実は真逆なんです。
辞めさせたい社員を陽も当たらない一室に異動させる(仕事を全く与えない)という方法です。
仕事は一切与えない。そこに異動した社員の「仕事」は、せいぜい日がな一日新聞を読むことくらいです。
一見、それで給料がもらえるのだから、いい仕事だと思えなくもないですが、これがリストラに繋がるのは、当の本人にすると、これほど辛い話はない。
誰にも必要とされず、邪魔者扱いされて日々を過ごしていると、自分が本当に無能な人間になったような気がしてくるものです。
それが辛くて、やがて自分から辞めていくようになるのです。
私も無職の時期があったので、その辛さは本当に分かります。自分が必要とされていないと思うほど辛いことはありません。しかも無職の場合は、「社会に」って思っちゃいますから、死にたくなることだってありました。
退行現象
さて、少し前まで自信に満ちて仕事をしていた人でも、このような仕打ちにあうと、自分は本当にダメな人間だと思いはじめるのは、心理学的には、一種の「退行現象」といえ、退行現象は、弟や妹の生まれた子どもによく見られるもの。
たとえば、親の愛を一身に受けていた一人っ子の家に、弟か妹が生まれると、親の関心はどうしても生まれたばかりの赤ん坊に集まります。
すると、それまで一人で着替えをしたり、トイレに行くことができた上の子が、突然オネショをしたり、服を自分で着られなくなってしまうのです。
これと同様のことが、周囲から無能扱いされた大人にも起こることがあるのです。
閑職(かんしょく)に回された人は、そうなることを無意識のうちに恐れて辞めていくともいえ、こういう方法を用いれば、そうした現象をあえて作りだすことで、ライバルや生意気な部下を無力化することも可能になります。
もっとも、これが成功するかどうかは、相手の性格によるところも大きいです。
外向的な人は、社内で無能者扱いされても、社外でストレスを発散できるため、効果は薄く、逆に、内向的な人は、ストレスがどんどん心に沈殿するため、こちらの思惑にハマりやすいといえるでしょう。あなたのタイプはどちらですか?
さて、自ら退職した場合でも、脅迫された、あるいは騙されて退職届を出させられたなどと主張する問題社員もいますが、脅迫された、騙されたということは、問題社員が証明しなければならず、このような主張が認められることは稀です。
以上のように、問題社員に対しては即刻解雇といった即時的な対応ではなく、段階を踏んだ対応を検討することが重要です。
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