日本の採用はNG プロ経営者・カルビー会長松本氏の人材目利き力

カルビーの会長であり、プロ経営者の松本晃氏については何度かこのブログでもご紹介しました。

彼は伊藤忠商事から出向した医療関連の子会社センチュリーメディカルで、後に経営者として必要になった多くのことを学びました。

なかでも大きな財産となったのが、人材を採用する経験とそれを通じて養った人材の「目利き力」でした。

松本氏は常々、人の大切さを説いていますが、その考えの礎はセンチュリーメディカル時代に築かれたといいます。

今日も、プロ経営者で私も尊敬している松本晃さんについてインタビューされている記事がありましたので、ご紹介させていた大来たいと思います。

採用面接、人任せにせず

出向直前の伊藤忠での肩書は課長でした。当時、課長の部下といえばせいぜい7、8人でした。

極端な話、課の売り上げを伸ばすことぐらいは僕だけでもできました。実際、伊藤忠時代は、何でもひとりでやっていました。

ところが、センチュリーメディカルでは、そうはいきません。

取締役営業本部長として、大所帯の営業部隊を束ねなくてはいけない。

僕は現場が好きなので、現場にも顔を出していましたが、ひとりで会社の製品を全部売れるわけがありません。売り上げを伸ばすには、優秀な営業マンをたくさん集めないといけない。また、そういう仕組みを作らないといけないと考えました。

それで完全歩合(フルコミッション)制度の契約社員の採用を始めたわけです。

契約社員の採用には、時間もお金もものすごく使いました。

リクルートの転職情報誌に毎週のように求人広告を出したんです。

それも表紙をめくった1ページ目の全面にカラーで載せました。当時はバブル景気の真っただ中で、完全歩合で稼いでやろうという若者は大勢いました。

選考は厳しくやりました。毎週、30人から40人は面接したんじゃないかな。1年で、おそらく2000人ぐらい面接したと思います。当時の社長もよく面接してくれました。

毎週と聞けば、「よくやるな」と思われるかもしれませんが、僕にしてみれば当たり前のことです。会社にとって欠かせない、大事な人を採用するわけですから。

会社というのは優秀な人がいて成長するんです。センチュリーメディカルのように物を売る会社だったら、優秀な営業マンがいないと立ち行かない。だから、必死になって優秀な人を探すんです。

人を見るポイントは3つ+1

プロ野球のドラフトと一緒ですよ。各チームのスカウトは、真夏の炎天下だろうと何だろうと全国各地の高校や野球場に足を運んで、目を皿のようにして金の卵を探します。そうやって汗水たらして、選びに選び抜いた選手をドラフトにかけてとる。真剣です。

それに比べて、多くの日本の会社の採用は実にいいかげんです。だいたい普通の会社では経験の浅い採用担当者が履歴書を見て、「こいつは俺よりいい学校を出ているな」とか、そんなところばかり見て決める。だからいい人材がとれないんです。

僕は、そんなのは受け入れられなかった。人を採用するのは初めてでしたが、経験を積むうちに人のどこを見ればよいかも学びました。

僕は、面接するときに履歴書は見ません。では、どこを見るかというと基本は「人」です。ポイントは3つあります。まず、インテグリティー(倫理観、高潔さ)を持っているかどうか。僕は「倫理観のない人は21世紀に生きる必要はない」とまで言ってしまうくらい重視しています。相手にインテグリティーがあるかを、たかだか30分ぐらいの面接で見分けるのは正直簡単じゃありませんが。

2番目は「地頭」がよいかどうかです。地頭は、卒業した大学や学歴などとはまったく関係ありません。だから履歴書を見ないんです。3番目は人に好かれるかどうかです。中途採用の場合はもう一つ、4番目のポイントがあって、自分で成し遂げた実績や成功した経験があるかどうか。これが大事です。面接では、こういうポイントに集中して判断する。だから優秀な人がとれるんです。たまには外れることもありますが、打率は高かったと思います。

これらのポイントは人事担当の方々にものすごく参考にしてほしいです。

倫理観や高潔さも取り繕われてしまうと、熟練者じゃないと見抜けないかもしれません。(倫理観や高潔さも、うまい人は面接でいくらでも皮を被ろうと思えば被れます)。

地頭力は、その本が出ているくらい大切なポイントです。

でもこれもなかなか見抜くのは難しいと思うんです。松本さんなら見抜けるのだと思いますが、よほどの方を面接官にしないと見抜けないかもしれません。

人に好かれるかどうかというのは、これも難しいと思いますが、その人のなんとなくの雰囲気である程度は判断できるでしょう。他に比べたら難易度は低いと思います。

4番目については本人の口から出た言葉を信じるしかないですね。

会社の人材評価への疑念、頭を離れず

センチュリーメディカルには結局、6年間在籍しました。当時の典型的な出向年数は5年でしたが、5年が過ぎても本社は何も言ってこなかった。松本は稼げるからもうしばらく置いておこうと判断したのかもしれません。しょせん僕なんて、会社から見れば、ただの「キャッシュカウ」(もうけるための駒)だったわけですよ。

僕は若いころから、自分に対する会社の評価に疑問を抱いていました。会社は自分を正当に評価していないんじゃないか。そもそも会社というのは、社内の人間をちゃんと評価しないところではないか。そんな考えをずっと持っていました。

実際、センチュリーメディカルの経営を立て直したのに給料はたいして上がらない。自分は社内ではそれほど評価されていないんだと思いましたね。逆に会社の外の人は、自分をきちんと評価してくれているはずだ。だったら、それを確認するために会社を辞めてみよう。そう思ったわけです。

1992年の夏、45歳の誕生日の2週間ほど後でした。センチュリーメディカルの当時の社長に会社を辞める考えを伝えました。社長にしてみれば、寝耳に水、青天のへきれきだったかもしれません。

社長から報告を受けた伊藤忠の常務から電話がかかってきました。「松本君、ちょっと昼飯でも一緒に食おう」と。案の定、「松本君、辞めるな。俺のところに戻ってこい」と慰留されました。でも辞める意志は固かったので、冗談交じりに「俺のところというのは、常務にしてくれるということですか」と聞いてみました。すると「いや常務室だ」と言うので、「それなら、やっぱり辞めます」と伝えました。

こうして出向時代を含めて20年勤めた伊藤忠を退職しました。すると21社から声が掛かりました。僕のにらんだ通りでした。その中の一つが、ジョンソン・エンド・ジョンソンメディカル(現J&J)だったのです。

もうはっきり言って、もともと持っているもの、住んでいる世界が違う感じですね。21社から声がかかるなんて凄すぎますよね。

採用を担当しているあなたも、松本氏の目利き力、参考にしてみてください。

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