目次
はじめに
今日は働く主婦に関して、面白い記事がありましたのでご紹介します。
人材サービスのビースタイル(東京・新宿)が主婦層を対象にした調査で、「2019年は18年よりも女性が働きやすくなったか」について、「実感がない」とした人が7割に上ったことが分かりました。
「より自由にキャリアを選べるようになった」と回答した割合は38%で、18年から横ばいでした。
在宅勤務など働き方の選択肢が広がる一方で、働く主婦の実感は厳しいようです。
調査は11月13日から11月22日にかけてインターネットで実施。
ビースタイルが運営する求人媒体「しゅふJOBパート」の登録者など主婦が対象で有効回答数は725人でした。
「19年は18年よりも女性が働きやすくなった実感がある」
と回答した人は30%にとどまりました。
働きやすくなった実感がある理由を複数回答で聞くと、1位は、「働く女性の数が増えてきた」(65%)で、
「産育休や在宅勤務制度などの制度が充実してきた」(44%)が続きました。
19年は、「女性が働くこと」についてどのような年だったかを複数回答できくと、「転職や独立、在宅ワークなどこれまでより自由にキャリアを選べるようになった年」が18年比2ポイント上昇の38%で最多。
「保育園不足やマタハラなど、働き続けることがこれまでより難しくなった年」が27%で続いたが、18年比では6ポイント下落しました。
20年の予測では、「より自由にキャリアを選べるようになる年」が45%と最多。
「企業が女性の働くことの価値をさらに認める年」(27%)、
「出産後も働き続けられるような環境がより整う年」(23%)が続きました。
調査を担当した川上敬太郎・しゅふJOB総研所長は、
「働きやすくなったという実感が伴うようになるには、本意型で無理なく働けるようになった人の実例の数がまだまだ足りない」
と指摘しています。
平成の時代は、“働く女性”が増えた時代です。
ただ、この動きと相まって、出産・育児との両立や男女の賃金格差、働く女性のキャリアアップなどなど、女性が働く環境をめぐるさまざまな課題も浮き彫りになりました。
もっと働きやすい環境にしていくためにはどうしたらいいのでしょうか?
働いて収入を得る女性が増えた
こちらのグラフ。
15歳から64歳までのいわゆる「現役世代」と言われる女性のうち「収入を得るために働いている人の割合」を示したものです。
平成に入って20年ほどの間は、50%から60%でほぼ横ばいに推移していましたが、その後は右肩上がり。去年はおよそ70%と、10人に7人は収入を得るために何らかの仕事に就いていることがわかります。
一方で…。
「仕事と子育ての両立が難しい」「同じ仕事をしているのになぜ男性よりも給料が安いの?」
「フルタイムで仕事をしたいのに希望する保育園がいっぱいで…」
などなど。課題も多く聞かれます。
女性が働きやすくなるためには?
それを探ろうと、女性の労働状況に関するある2つの統計に着目してみました。
“女性が働きやすい”のはどこ?
こちらの図。
横軸は、「夫婦がいる世帯」のうち「夫婦共働き世帯」の割合です。この中には結婚や子育てをしたあとも妻が働いているという世帯も含まれ、女性が結婚や出産をしたあとでも働ける環境があることを示す1つの指標です。
ただ、この数字だけで、女性がどのような仕事に就いてどんな待遇を受けているのかまではわかりません。
そこで、縦軸に「管理職全体に占める女性の割合」をとってみてみました。「管理職の割合」は、女性が主に正社員として仕事を続けキャリアも積んできていることも示していると言えます。
これらの2つの指標がともに高いのが図の右上の「オレンジ色」のゾーン。
必ずしもこの2つの指標だけで結論づけることはできませんが、オレンジ色のゾーンにある地域は、女性が結婚や出産した後も働き、キャリアの形成も比較的、実現できているとみられます。長崎県や鳥取県、それに岡山県や静岡県、山形県などがこのゾーンに入っていて、2つの指標とも全国平均を上回っています。
「2つの指標」が平成の時代で、どのように変わったのかを見てみました。平成4年と平成29年の数値を比較したのが次の図です。
多くの地域で、「夫婦共働き世帯の割合」と「女性の管理職の割合」ともに伸びているようです。
中でも注目したのは、2つの指標が大きく伸び、「オレンジ色のゾーン」にも入っている長崎県と鳥取県。
長崎県での「女性管理職」を増やすあれこれ
「長崎県では労働力人口が大幅に減っています。これまでの枠組みにとらわれず、女性が働きがいを持てる職場を増やし、力を発揮してもらうことが県全体にとっても大事なことなんです」
こう話すのは、長崎県男女参画・女性活躍推進室の課長補佐の北村哲也さん。
長崎県では、女性が働き続けられる環境作りを後押しすることが、今後の地域産業を支える点でも必要だとして、女性の人材育成や就労支援を進めています。
その支援策の一つが、女性管理職を増やそうという取り組み。
平成27年度から、働く女性を対象に無料の「女性のための管理職養成講座(ミドルマネジメント講座)」という講座を定期的に開き、「労務管理」や「仕事とプライベートを充実させるために必要なスケジュール管理」などをアドバイスしているそうです。
講座を開いたきっかけは、多くの女性から「管理職になると残業や休日出勤が増えるのでは」「責任が重くなると十分に果たせるか自信がない」といった管理職への不安の声が聞かれたからだそうです。
講座では「部下の力を引き出す指導法」などもアドバイス。初めは、
「管理職は部下の責任をとるばかり」
とネガティブにとらえていた女性も、
「部下の育成を視野にいれて自分の成長にもつなげていきたい」
と前向きな声も聞かれるようになったと言います。
女性がやりがいをもって働き続けられるようにするには、仕事と育児の両立を支える制度面の充実なども不可欠ですが、一方で、女性の管理職が少ない職場では、管理職像を描けない女性も少なくありません。
北村さんは
「管理職になることへの不安を少しでもなくす取り組みを今後も進めたい」
と話していました。
女性管理職は当たり前?! 社員たちの意識は?
女性が当たり前のように管理職でやっていけるようになるには、周りの理解や制度も必要です。企業の取り組みはどうなっているのでしょうか。
長崎県や地元経済界などで作る団体から、「女性の活躍が進んでいる企業がある」との紹介がありました。
訪れたのは、長崎県大村市に本社のある「九州教具」という会社です。
ホテル運営やオフィス向け事務機器の販売などを行っている会社で、240人余りの従業員のうち、およそ半数が女性です。
「特別なことはしていないのですが・・・」と前置きしながら出迎えてくれたのは、船橋佐知子副社長。
この会社では、特にホテル事業部で女性の活躍が進んでいるそうで、長崎市内で運営する3つのホテルでは、部課長級にあたる支配人・副支配人6人のうち2人が女性。係長級にあたる「現場リーダー」であるチーフも、7人のうち3人が女性です。
さらに、育児をしながら働く「ママ従業員」がここ数年、増えていると言います。
平成23年には、16人の女性従業員のうち4人だけだった「ママ従業員」は、今では17人のうち9人と2倍以上に増えています。
しかも、このうち8人は、2~3人の子どもがいたり、第2子を妊娠中だったりする女性です。
そして、いずれも、会社の産休や育休の制度を利用して職場復帰を果たしているそうです。
女性が働き続けられる理由は?
出産しても働き続け、管理職としてもやっていける。その秘密は何なのか。
ママ従業員の1人、山本香さん(41)に話を聞きました。
山本さんは去年、ホテルの支配人に抜擢されました。家庭では小学3年生から中学3年生までの3人の子どもを育てているママでもあります。
「管理職になったのは、3人目を出産したあとの31歳の時です。ホテルの副支配人になりました。そのころ、1人目の子がちょうど小学校に入学して。小学校というものに私も子どもも慣れていないし、下の2人もまだ小さくて、することが一気に多くなって、とても大変でした」
とはいえ、管理職を引き受けるにあたって、迷いや不安は感じなかったそうです。
「やってみよう!と、すぐに話を受けることができました。もともと楽観的な性格なのもありますが、やってみたら、なんとかなるだろうと」
と、笑顔で話す山本さん。
その後、去年には支配人になり、ホテル全体のマネージメント業務や12人いる部下の労務管理なども行っています。
女性支配人がきっかけ 管理職は「業務集中型」から「業務分散型」へ
山本さんが支配人になるにあたって、会社では、これまで1人だった副支配人を2人体制にして業務を分散化しました。
副支配人を2人にして昼間の業務負担を減らした分、「ナイトマネージャー」という職務も加え、副支配人と兼務してもらうことにしたのです。
「ナイトマネージャー」は、夜の勤務時間帯は支配人と同等の権限をもって仕事をします。
船橋副社長によりますと、「これまで支配人はホテルにひとたび何かあれば、『休日でも夜間でも駆けつける』という暗黙の了解があり、負担が集中していた。副支配人以下への『権限委譲』もできにくい状況があった」そうです。
会社は、女性が支配人になることをきっかけに、夜間の対応だけでなく、さまざまな業務を多くの従業員で分担するようにしました。従来の「何かあったら管理職」という考え方を見直したのです。
これによって、ほかの従業員に仕事に対する自覚も生まれ、「全員でこのホテルを盛り上げていこう」という機運が高まり、接客サービスの向上にもつながったと、船橋副社長は成果を感じています。
山本さんは、「業務分散を進めているとはいえ、支配人ですのでやはり、土日も働くことが多いですし、夜にトラブルなどが起きた際は、ナイトマネージャーから相談の電話が入ることもあります。
そのつど指示を出すなどして乗り越えています。家で子どもたちによく言うのが、“私の手は2本しかありません。
自分でできることは自分でやってほしい。それは絶対私がしないといけないの?”ということ。子どもをもって、全部自分でしなくちゃ、と抱え込むのをやめた。それがもしかしたら、仕事を続けていけているコツなのかもしれません」と話していました。
後輩の「ママ従業員」たちも見ている
支配人の山本さんを、後輩たちはどう見ているのでしょうか?
山本さんとは別のホテルでフロントの責任者をつとめる、チーフの隠崎麻衣子さん(38)は入社14年目。
5歳から小学5年生まで、山本さんと同じく3人の子どもを育てながら働いています。
隠崎さんは山本さんについて、「おっとりしていて、とってもチャーミング。
だけど、すごく頼りがいがあって芯が強い。
そのギャップが大好き」と表します。
何より、仕事も育児も楽しみながら向き合う姿が印象的だそうで、「“楽しむ”って、とても難しいこと。
私は、1人目出産後に復帰した時、仕事も子育ても完璧に一生懸命それぞれに全力でやろうと思っていたから、すごく大変だった。
でも、山本さんから、『そんなにすべてに一生懸命にならなくていい。できる最大限をしよう』と声をかけてもらい、そこから、肩の力がふっと抜けて楽になった」と話していました。
そして今は、「誰にでも平等にチャンスはあるし、思いっきり働く権利があるんだと感じます」と話していました。
働きやすさとは?“変化を受け入れしなやかに”
ホテルで責任ある立場にある2人は、後に続く後輩たちに伝えたいこととして、「“子どもがいるからしょうがない”、と身を引かないで誰でも挑戦できるということを伝えたい」(隠崎さん)、「とにかく楽しく、何でもいい方向に考えていこう」(山本さん)とエールをくれました。
この会社では、「ママ従業員」が中心になって、会社の業務改革につなげるプロジェクトチームも定期的に開いてきたそうです。
そこでは全社員にアンケートをしたり、互いの働き方について悩みを出し合ったりして、社員が考えていることを提言し、会社でも組織づくりに生かしてきたということです。
取材を通じて、悩みや課題を率直に話し合ってきたその積み重ねが、風通しのいい企業風土になっていると思いました。そして、「この仕事が好きだ」「楽しい」と言い切れるプロフェッショナル精神と強さも、それぞれの女性に感じました。
「特別なことはしていない…」。でもこれは「立場をこえてコミュニケーションを取る」「社員の声に合わせて組織を変える」という当たり前のことを、当たり前にしているということなのかもしれませんね。
鳥取県では…女性活躍を後押しする“ボス”を増やす
鳥取県では、少子高齢化と人口減少で働き手が減少。育児中の人だけでなく、介護をする人も働き続けてほしいと、育児中の社員を育てる「イクボス」に加えて、県独自に、介護も含めて部下の家族=ファミリーに配慮できるボス、「ファミボス」を増やすことを目指しています。
育休などの制度が整った会社を「男女共同参画企業」として認定していますが、その認定企業にはさらに、目標を掲げる「イクボス・ファミボス宣言」をしてもらうよう働きかけていると言います。
鳥取県の担当者によると、
「制度を整えてもらうだけではダメで、実際に使ってもらわないといけないんです。それには、経営者の意識を変えてもらうことが重要。そのために、イクボス・ファミボス宣言をしてもらい、休暇の取得や、子育てへの参加について社員に具体的に促す取り組みを実践してもらっています」
とのこと。
また、県として、企業の経営層や管理職などに向けて「イクボス・ファミボス養成塾」という研修を開き、働き方の改革を後押ししているそうです。
鳥取県の女性管理職比率は、平成4年には9.1%でしたが、平成29年には19.7%と飛躍的に伸び、全国で4番目に高くなりました。
鳥取県の担当者は、
「イクボス・ファミボスは、直接的に女性管理職を増やすという取り組みではありませんが、家庭と両立しやすい雰囲気の企業が増えたことで、仕事を続ける女性が増え、結果的に管理職の増加につながったのではないか」
と話しています。
海外と比べると…日本は、まだまだ
平成の間に劇的に変化してきた女性の働く環境。個々の企業や地域では、取り組みが徐々に進んできているようです。
しかし、一方で、世界各国と男女の格差を比較すると、大きく立ち遅れている現状が見えてきます。
世界の政治や経済界のリーダーが集まる「ダボス会議」を主催するスイスの国際機関「世界経済フォーラム」が去年12月に発表した「ジェンダーギャップ指数」によると、日本の「女性の労働参加度」は149か国中79位。
G7=先進7か国の中ではイタリアに次いで低いと評価されています。
「管理的職業の男女の人数差」はさらに低く129位とされ、G7の中ではダントツの最下位なのです。
なぜ日本で女性管理職が増えない?専門家に聞く
なぜ日本では、外国に比べて管理職の女性の割合が少ないのでしょうか。
女性の働き方に詳しい法政大学の武石恵美子教授は、「昇進の仕組みの違いにある」と言います。
武石教授によれば、外国では転職する人も多く、中途入社から昇進することが当たり前のようになっているので、出産などでキャリアが中断され、途中から参入した女性も同じように昇進することができるそうです。
一方で、日本は終身雇用が一般的で、年功序列で昇進していくので、女性が出産・子育てで一度キャリアコースから外れてしまうと、戻っても挽回できないと指摘します。
また、武石教授は、日本では、女性労働者の非正規雇用率が高いことも問題だと指摘します。
平成のはじめの頃は主婦のパートが中心でしたが、1990年代後半から、「若年非正規」と呼ばれる人たちが増えてきたといいます。
「若年非正規とは、新卒で正社員になれず、派遣社員や契約社員になったケース。これは非常に問題で、非正規でスタートしてしまったがゆえに、昇進コースから外れてしまった女性も多いと考えられます。
こういった人の正社員転換の道筋を作り、非正規スタートの人にも昇進できる仕組みをつくることが求められています」(武石教授)
では、女性の管理職割合は、何%くらいが適切なのか?
武石教授は、「具体的な数字をあげて目標とする、ということではない」と言います。
「問題とすべきは、たとえば入社したときには女性が30%いたのに、管理職では5%しかいないとなったら、それはやめていっているか、社内で昇進できていないか、女性だけに「何か変なことが起きている」からです。
それはマネージメントのロスが起きているということ。「国がいうから女性を3割にしなきゃ」ではなく、問題があるから改善していくという考え方で取り組んだほうがよいと思います」(武石教授)
平成は、女性の社会進出が一気に進んだ時代と言えるのでしょうか?
「平成のはじめと終わりだけを比べれば、一気に女性が社会進出した時代といえるが、順調に伸びてきたわけではなく、山あり谷ありの時代だったといえると思います。女性の活躍の舞台が増えるかどうかは、景気に大きく左右されます。平成のスタートはバブル時代の終わり頃で一気に採用が増えて、その後氷河期で全然ダメで、ちょっと上向きになったと思ったらリーマンショックで冷え込んで・・・。2010年くらいからやっと、労働力の不足ということもあり、国も女性の活躍に目を向けるようになってきて、特にここ4~5年は劇的に変化したと感じます。もう、状況が後戻りすることは考えにくいので、次の時代は、いかにこの流れを前に進めるかだと思います」
と武石教授は語ります。
次の時代は、もっと当たり前に
“働く女性”が増えた平成の時代。女性の働く環境は、日本ではまだまだ、景気などの要因に左右されやすい状況だと思います。
そうした中でも、個々の企業や地域の取り組みもヒントに、次の時代には「女性が働き続けること」「続けられること」が当たり前になるよう、変わっていく必要があると思います。
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