新型コロナウイルスの感染拡大で激しく揺れる世界の株式市場。
市場の嵐は、厳しい局面でも揺るがぬ頑強な企業と、逆境にもろい企業とをふるい分けます。
マネーの動きは「コロナ後」を見据えた選別の始まりでもあります。
「単に金融市場や短期の経済成長に圧力をかけただけではない。世界経済がこれまで前提としてきたことの多くに再検討を迫るものだ」。
米資産運用大手ブラックロックのラリー・フィンク最高経営責任者(CEO)が、3月末に株主にあてた手紙を公表しました。
ジャストインタイムのサプライチェーンや飛行機での海外旅行の見直し。
「投資家心理もビジネスも消費も変わる。危機を脱した世界は異なるものになる」
主要銘柄の騰落率をみても、そうした変化を市場は嗅ぎ取っています。
急落局面でも日本ではNTTドコモ、米国はマイクロソフトが逆行高になりました。
テレワークで米マイクロソフトの「チームス」などの利用が急増しています。
両社ともテレワークなどに伴い、遠隔通信等の利用増が追い風になります。
マイクロソフトは「チームス」での電話や会議サービスの利用が急増しています。
「顧客企業のリモートでの働き方を支援し、危機後も長期の成長力が強まる」
(米モルガン・スタンレーのアナリスト、キース・ワイス氏)
米小売り最大手、ウォルマートも底堅いです。
3月下旬、従業員への特別賞与と15万人の臨時雇用を明らかにしました。
新型コロナで日用品への需要が拡大、ネット通販の利用が急増しています。
こうした企業に共通するのは、「強いキャッシュフローとバランスシート」。
マイクロソフトはクラウド型への事業シフトで、年間4兆円近い純現金収支を生む会社に変身。
嵐の市場でも沈まぬ船に映っているに違いありません。
逆に、売り込まれたのがボーイング。
新鋭機737MAXの運航停止の影響もありますが、あらわになったのは財務面のもろさ。
債務超過にもかかわらず、自社株買いと配当で年間8000億円近い金額を株主に還元しました。
研究開発費や設備投資は絞り、ギリギリまで株高を突き詰める演出が裏目に出ました。
日本では銀行株の弱さが目につきます。
4月に入っても、市場は落ち着きません。
米VIX(恐怖指数)、ハイ・イールド債の利回り差、銀行間取引金利などいずれもなお高いまま。
企業倒産や失業の急増など、さらなるダウンサイドのリスクは消えません。
一方、各国の経済対策と金融緩和で、歯止めがかかる可能性も見ておく必要があります。
アライアンス・バーンスタインの堀川篤・日本バリュー株式最高投資責任者は、
「どちらか1つのシナリオに決めるべきではない」
としています。
そのなかで景況感に左右されにくい銘柄を探します。
収益がいまは厳しくても、健全な財務を保ち、長期にみれば株価の戻りが期待できる
「質の高い銘柄を組み入れておくとき」といいます。
そうであれば、個別銘柄の選択で市場平均を超過する収益を狙う色彩が強まる局面でしょうか。
「経営が強く、長期戦略がしっかりしたグローバル企業が選ばれていく」
(ブラックロック・ジャパンの福島毅チーフ・インベストメント・オフィサー)。
嵐は企業を鍛えます。
次に待つ時代がどうなるかを見据え、自らを変革し続ける経営。
力強く嵐を抜け出していく実力派企業に、市場の視線が集まることになりそうです。
いずれにせよ、コロナが収束するまでは、予想が非常に難しい市場です。
売買は自己責任。慎重に。
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