あなたは、「今日から残業をなくせ。」そう言われたら、実現できますか?私は基本残業自体をしていませんし、「残業=悪」、「残業=仕事のできない人がすること」と確信しています。ただ、中には、「顧客との連絡がある。」「明日の会議の準備がある。」「営業報告書を送信しなくては」などと言った理由で、そう簡単にいかない方も多いでしょう。
今回は、あの大手企業、「味の素」で「残業なし」の号砲が鳴ったというお話をしようと思います。
■働き方に「昭和」が残る
東京駅の東側、八重洲口の改札を出ると、古いオフィスビル街が広がっています。あちこちで再開発が進んでいるとはいえ、ビルの谷間には昭和の香りが色濃く残っています。日が落ち、空の色が濃くなると、東京駅に向かって帰宅する会社員の群れが現れます。古き良き居酒屋も沢山あり、賑わっています。
しかし、オフィスビルの明かりは消えません。そのため、夜空はビルからの明かりに照らされ、星がみえることはほとんどありません。明かりがついた窓の中では多くの会社員がパソコンに向かっています。その姿はなんと山手線の終電が発車する午前1時近くまで、完全にいなくなることはありません。モーレツサラリーマンならぬ社畜も社畜。こんな会社員どうしようもないですよね・・・。
こんな働き方がいいわけない!八重洲口から徒歩10分ほどの大きなビルで、ある決意が固められていました。モーレツサラリーマンから脱却せよ!でなければ、会社の未来は危うい!
と、決意を固めたのは、味の素社長の西井孝明(59)。2020年度までに年間労働時間を1800時間に短縮する――と経営会議で決定しました。政府が「働き方改革」の旗を揚げるより早く、2015年のことでした。
これは素晴らしいですね。社長がこうしてトップダウンで強く宣言して全員に周知徹底してくれないとなかなか会社は変わりません。というか、そもそも西井社長の前の社長は何をやっていたんだ?!って話ですよね。この西井社長は2015年からまさに社長になったので、なってすぐに決定してくれた形です。
■朝4時まで働く日も
ただ、実は西井さん自身が、モーレツサラリーマンならぬ社畜だったのです。
西井さんは商品企画やマーケティング部門を経験しました。
1982年に味の素に入社。商品企画やマーケティング部門を渡り歩きました。当時は、長時間働く会社員が優秀とされたどうしようもない社風。昼間は顧客を回り、夕方に会社に戻ってから企画書作成や書類処理に追われ、日付が変わろうかというころまで働きました。それから同僚と夕食を兼ねて酒を酌み交わす。深夜にタクシーで帰宅。当たり前でした。「仕事があれば帰れない。朝4時まで働く日もあった」とのこと。
残業で終電を逃した味の素社員をつかもうと、本社の周囲をタクシーの列がぐるりと囲んでいたという始末・・・。
■ブラジルでの驚き
ところが、2013年、初めての海外赴任で、西井さんは目を疑いました。
社長として赴任したブラジル現地法人。現地社員は終業時刻になるとさっさと帰ってしまいました。夕食は、平日であっても家族と一緒にとるのが当然。平日の夕食のテーブルを家族と囲んだ記憶など、西井さんにはほとんどありませんでした。
日本では考えられない有給休暇制度もありました。
「フェリアス」といって、11カ月働いたら、残る1カ月は有給で丸々休む。そんなに長く休むと、復帰しても勘が鈍って使い物にならないだろう――と、思いきや、心身ともにリフレッシュした現地社員は、休み明けに意欲的に仕事に向き合いました。
私は心から賛成ですし、心から素晴らしいと拍手を送りたいです。この制度に。日本人は社畜すぎますし、休まなすぎです。そしてくだらない同調圧力。もう本当に嫌いです。有給休暇、あるんだから皆全部使うべき、使って何が悪いんですか?このフェアリスのような休みすら日本は無いのに。そう思いませんか?残業もそうです。なぜ残業するんですか?「就業時間」の意味分かってますか?と全員に言いたいくらいです。フェアリスのような休みがあれば、リフレッシュして意欲的に仕事に向き合えるのは当然です。勘が鈍るなんてことがあるわけないでしょう!
社畜の日本人と比べれば、年間労働時間ははるかに短いですよね。でも、決して怠けているわけではありません。メリハリを利かせ、成果はきっちり上げる。まさに生産性が高いということじゃないですか。
でも、この西井さん、ブラジルに行かなかったら永遠に分からなかったと思うので、私は全然彼のことは素晴らしいとは思いません。だって、ブラジルなんかに行かなくても普通の社畜じゃない人なら気づくはずですもん。こんな残業して終電逃してタクシーで帰るのが当たり前だっていうのがおかしいことっていうのに。
働き方改革の盛んな今こそ、残業を前提とした日本の就労スタイルが、世界の中で、いかに異常か皆さんも声をあげましょう!!
欧米企業では、同じパフォーマンスを出しても長い時間働く社員は能力がないと見なされます。その上司も、マネジメント能力がないとマイナスに評価されます。生産性に対する目が厳しいなかで雇用が成り立っているので、個人も時間管理がきちんとできているんです。
労働時間の削減について、一番反発が大きかったのは、営業部門だそうです。確かに営業というと外部の顧客との関りが大きいですからね。でも、それって絶対なんでしょうか。労働時間を削減することで死ぬわけじゃないですし、会社が潰れるわけじゃありませんよね。相手に説明すれば分かってくれるでしょうし、その辺はもっとフランクに考えていいのではないでしょうか。ブラジルみたいに。
■ワースト2は移動と会議
そして、一番時間がかかる、”時間泥棒”のワースト2は、移動と会議(資料作成含む)ということが西井社長が率先して始めた社内調査で分かりました。特に移動は全労働時間の25%も食っていました。。
そこで、たとえば地方支店では、営業車でなく公共交通機関で客回りするようにしました。最寄り駅まで電車で移動し、駅でレンタカーを借りて顧客を回ります。面倒なようですが、これで長時間運転の必要がなくなり、疲れにくくなります。電車やバスに乗っている間にメール確認や資料作成もできます。移動時間を無駄にしない一石二鳥の策ですね。
日々の営業報告書は、出先からスマートフォンで作成できるようにしました。サテライトオフィスを全国に150カ所設置しました。営業報告書の作成のため商談後にわざわざオフィスに戻らなくてよくなりました。会議も極力減らし、会社にいなくてもパソコンで参加できるネットワーク会議システムを導入しました。
すごい行動力。うちの社長には絶対こんな行動力はありません。というか、うちのグループ全体に無いでしょうね・・・。結局は公務員。何か重大な事件があって初めてゆっくりゆっくりと動き出すって感じなんです。国と同じです。。。
■なんと、国が見習う!
そして、なんとこの味の素がすごいのは、国が見習ったってことなんです!どういったことかと言いますと、19年3月29日、味の素本社には首相の安倍晋三が来たのです。残業時間の上限規制を初めて設ける働き方改革関連法の本格施行を4月1日に控え、働き方改革に先進的に取り組み実績を挙げた企業として安倍首相が視察を希望したのです。
西井社長の説明の後、安倍首相は4人の社員と懇談しました。
「新しい何かにチャレンジしたくてミュージカルを学びはじめた。プライベートが充実すると仕事へのモチベーションも相対的に上がる」(30代男性)
「午後4時半をすぎると同僚はいそいそと帰っていく。小2の子どもを育てながらフルタイムで楽しく働いている」(30代女性)
これが最高です!私はこれが理想の一つです!4時半を過ぎると皆帰っていくと。子育て社員にも優しい会社。最高です!
味の素の18年度末の社員1人当たり年間労働時間は1820時間。15年度末の同1976時間からなんと約150時間の短縮。
社員の4分の3が午後6時前に帰宅。
「労働時間を減らせば外国人に限らず子育てや介護中の社員など様々な人材が味の素グループで働ける。多様な意見や価値観がぶつかりイノベーションが生まれる」。それが西井社長が思い描いていた職場風景です。「労働時間の量の改善は進んだ。今年度からは戦略を修正して質の改善に取り組む」。と、働き方改革の仕上げに西井社長の挑戦は続きます。
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