米国の巨大IT企業「GAFA」(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)が圧倒的なパワーを発揮する一方で、日本では大企業の多くが衰退のリスクに直面しています。
デジタルシフトに対応して会社を成長させるには、どんな人材が必要なのでしょうか。
『GAFAに克つデジタルシフト』を書いた鉢嶺登氏に聞いた記事をご紹介したいと思います。
そこにある危機「アマゾン・エフェクト」
「アマゾン・エフェクト(アマゾン効果)」が世界中に広がっています。
高度なデジタル技術をベースに次々と斬新なビジネスモデルを打ち出す「巨人企業」の進撃を受けて、既存企業が次々と収益源を奪われています。
お世辞抜きでもアマゾンは本当にすごいですよね。私もいつの間に完全に取り込まれました。プライム会員にはもちろんなっていますし、何かあればアマゾンって感じになっています。
アマゾンが弱いところ
ただ、私はアマゾンにも弱点があると気付きました。それは下記の2点です。
- 金額の安いものなどは単品では売っていないことが多い
- 中国製などの怪しい出品が沢山ある
1については、例を挙げたほうが分かりやすいですね。例えば、綿棒。
綿棒を1つだけ買いたくなった場合、アマゾンで探してみるとどうなるでしょう。
1つだけで売っている場合がほとんど無いのです。だいたい複数個でまとめて売っているか、1つで売っているとしても、「まとめ買い対象商品」となっています。
なので、もし、単価の安いものを1つだけ購入したい場合は、Amazonで買うよりも、ヨドバシカメラやビックカメラで検索してみることをお勧めします。特にヨドバシカメラは、注文から発送までがとても早いので、私はビックカメラよりお勧めします。
2については、最近ネットや雑誌などでも話題になっています。
Amazonは楽天などと比べて参入障壁が低いためか、世界のAmazonだからか、聞いたこともないような企業の出品が乱立しています。
特に中華系が本当にここ数年で増えました。例えば、自撮り棒やアイマスクを欲しいなと思って検索しても、同じような商品でかつ知らないメーカーの商品が大量に出てきます。
そしてそのほとんどが中華系。ただ、なんでもかんでもヤバい商品というわけではありません。
そのあたりは、DIMEや家電系の雑誌でよく特集していますので、そちらも参考になるかと思います。
ただ、私はその雑誌で非常に高評価で勧められていた自撮り棒を買ったのですが、日本製品では考えられない物が届きました。
商品がところどころ汚かったり、手垢のようなものが付いていたりするのです。
日本の製品ではそんなこと有り得ませんよね。百歩譲ってたまたまそのような品だったかもしれませんが、品質を疑います。
私は気持ちが悪くて返品することにしました。もう少しAmazonは出品者についての参入やチェックを厳しくするべきです。
サクラレビューなども非常に多いので、お気を付けください。購入者の我々も情報を駆使して、見極める目を養う必要がありそうです。
ちなみに、サクラレビューについては、過去、このブログでも紹介していますので、ご興味があれば下記をご参考にしてみてください。
https://www.kikunoblog.com/amazon-2/
さて、Amazonの力により、米国では名門のシアーズ・ホールディングスやカジュアル衣料のフォーエバー21、GAPといった小売企業が相次いで店舗の大規模リストラや経営破綻に追い込まれました。
日本も例外ではありません。オプトホールディング代表取締役社長グループCEOとしてデジタルシフト支援を幅広く手がける鉢嶺氏は、
「GAFAのビジネス拡大によって経営面で影響を受けない業界は、日本でもゼロと言ってよい」
と断言しています。
GAFAの強さの源泉は社会インフラを担っている点。グーグルは、BtoC分野で「検索」「Eコマース」「スマホ」「地図情報」など消費者の生活と切り離せないプラットフォームを押さえています。
あなたもグーグルストリートビューは興味本位ででも一度は見たことがあるでしょう。
GAFAはクラウドや人工知能(AI)の技術を生かしてBtoBにも急速に進出しています。今後ますます勢いを増していくでしょう。
その一例がエネルギー産業。
「データセンターを使うGAFAは、すでに膨大な電力を使う存在だ。この分野に彼らが参入してくるも時間の問題といえる」
と鉢嶺氏は語ります。
「攻めのデジタルシフト」が生死を決める
「デジタルを軸に経営環境が激変しているのに、日本では危機意識を持たない経営者があまりにも多い」
と鉢嶺氏は警告しています。
その典型例がアパレル業界。
「経営者セミナーに行くと、『アマゾンが日本でアパレルに参入したらどうなるか』という問題に明確な解を持つ人がいないことに驚く」
19年9月には、衣料品通販サイト「ゾゾタウン」を運営するZOZOがソフトバンク傘下のヤフーの子会社になると発表されたのは驚きのニュースでしたよね。
この動きについては素人目に見ても、「アマゾン効果」が関係あるんだろうなあということが容易に想像できます。
オプトホールディングは今から十数年前に電通と提携して、同社のデジタルシフトを手がけてきました。その後も「TSUTAYA」を運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブやソフトバンクをはじめ多くの大手企業でコンサルティングを行っています。その経験を踏まえて鉢嶺氏は、
「デジタルシフトが成功するかどうかは、経営トップの問題だ」
「トップにデジタルシフトを戦略の中心に据える決意と覚悟がないと、デジタルシフトは失敗する」
と断言しています。
デジタルシフトには「攻め」と「守り」の両面があります。
守りのデジタルシフトは比較的ハードルが低いです。社内の効率化のためにAIを入れるといった具合に、どの会社でもツールを入れるだけで済みます。
一方、
「攻めは難しい、AIを使いながら自分たちのビジネスの武器を作っていく作業になるからだ」
と鉢嶺氏。
その当面の目標は、GAFAが自社のビジネス分野に参入してきたとしても負けない戦略を確立することにあります。
ある意味で、新規事業を立ち上げて軌道に乗せるプロセスと同じ。
「これに成功している日本企業は、リクルートや資生堂、SOMPOホールディングスなど数少ない」
と鉢嶺氏は言います。
トヨタですら「生きるか死ぬか」
デジタルを基盤とした新しい事業を始めようとすると、必ず既存の「稼ぎ頭」を担当する部門から反発が起きます。
これがいわゆる「イノベーションのジレンマ」。
「イノベーションのジレンマ」は私も資格の勉強で少し学んだことがあるのですが、改めてwikiを調べてみました。
イノベーションのジレンマとは、巨大企業が新興企業の前に力を失う理由を説明した企業経営の理論。クレイトン・クリステンセンが、1997年に初めて提唱した。大企業にとって、新興の事業や技術は、小さく魅力なく映るだけでなく、競合・共食いによって既存の事業を破壊する可能性がある。また、既存の商品が優れた特色を持つがゆえに、その特色を改良することのみに目を奪われ、顧客の別の需要に目が届かない。そのため、大企業は、新興市場への参入が遅れる傾向にある。その結果、既存の商品より劣るが新たな特色を持つ商品を売り出し始めた新興企業に、大きく後れを取ってしまうのである。
経営トップは、抵抗勢力とも言える既存分野の反対を抑えてでも、あえてリスクをとって成長分野に投資をする必要があるということですよね。
そこで、
「必然的に人や組織の問題が大きくなってくる」
と鉢嶺氏は言います。
トヨタ自動車でもジレンマの克服が急務です。同社の豊田章男社長は、
「もうトヨタも生きるか死ぬかである」
と2018年の決算説明会で語りました。鍵を握る技術は
- 「電気自動車」
- 「自動運転」
- 「ライドシェア」
の3つ。
今後、車社会は間違いなく大きく変わっていきます。ガソリンも要らなくなります。
近い将来、「電気自動車」に全面的に移行するので、エンジンの開発から製造ラインまで既存の技術が活用できなくなります。
「自動運転」の分野では、すでにビッグデータやAIに強いGAFAの存在感が強まっています。
既存の自動車メーカーは、IT企業のトップランナーを追いかける立場。
「ライドシェア」に関しては米ウーバーテクノロジーズやリフト、中国の滴滴出行(ディディ)がはるか先を進んでいます。
日本企業は国内の規制が障壁になって周回遅れの状況に甘んじています。
スピードこそ命
鉢嶺氏はデジタルシフトに失敗する企業に共通する条件を次の5つにまとめました。
- トップに、デジタルシフトを戦略の中心に据える決意と覚悟がない
- デジタルをわかっていない人が、デジタルシフトの責任者になる
- 既存事業を優先させ、デジタルをないがしろにする
- デジタルシフトの責任者に権限(カネやヒト)が与えられていない
- デジタルシフトによってもたらされるワクワクする未来を、経営トップが語れない
2について、私は国も危険だと思っています。だって、知っていますか?IT戦略推進大臣に、印鑑業界のドン(はんこ議連会長)を就任させているんです。それで、ITについてはハンコと両立していきたいなどと言っています。日本の未来はどうなってしまうのでしょうね。少なくとも先進国には遅れをとるでしょう。
そして、重要なのは、デジタルシフトを引っ張ることができる優秀な若い人材を活用するための環境整備。
「そのためには人事と予算の独立を確保できる分社化や子会社化、M&A(合併吸収)などをうまく活用することが重要になる」
と鉢嶺氏は強調しています。なぜなら、デジタルシフトの生命線が「スピード」だからです。新しいことを始めるのに半年かけていたら、その間に優秀な人材は他社へ逃げてしまいます。これまでの常識を上回るペースでビジネスのサイクルは加速しています。
GAFAに対抗できる企業は日本から出てくるのでしょうか。私はかなり難しいと思っていますが、
「その可能性は十分にある。その企業は、自らを破壊する可能性のあるビジネスモデルにチャレンジする勇気を持つ経営者が率いているはずだ」
と鉢嶺氏は話しています。
「アマゾンなんて、Eコマースの企業でしょう? ウチには関係なさそうだ」。
もし、あなたの会社の幹部がこのように受け止めているとしたら、転職を考えた方が良いかもしれません。そんな企業に成長は無いでしょうから。
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