はじめに
昨日は、カルビーの松本会長のお話をしましたが、あまりに素晴らしいので、本日もその話をさせて頂きます。彼は会社にとって無駄なものを徹底的に捨てました。いわゆる会社版の断捨離ですね。業務面では意味のない会議や書類を一掃し、事業面では売れない商品をどんどん生産中止にしました。業績が上昇気流に乗ったのは、そうして身軽になったのと無縁ではないようです。
家庭でも断捨離は精神的にもとても良い効果があると聞きます。断捨離はもちろん、整理整頓も心が綺麗になると言いますよね。最近のコンマリブームも記憶に新しいです。
今日の目次
- 価値ない」資料づくりになぜ時間を費やすのか
- いらない業務、現場の声で洗い出す
- 新商品の不振、マーケティング不全から
■「価値ない」資料づくりになぜ時間を費やすのか
彼はもともと合理的な人間、プラグマティスト(現実主義者)。無駄なことは大嫌いで無駄とわかっていてやるなんて、意味がないと思っているタイプ。これは経営者以前に人間としての話なので、直そうとしても直りませんよね。
なので彼はカルビーのCEOになったとき、まず無駄な会議と書類づくりをやめるように命じました。これは前回挙げた「10の考え方」の6番目にある「No Meeting, No Memo」(ノーミーティング、ノーメモ)。
日本語でざっくばらんに言うと、「会議なんてやめろや。書類なんてイラネ。」ということです。かっこいいですよね。皆さんの会社はどうですか?うちは会議は無駄に長い、ペーパーレス全盛期のこの時代に、紙大好き。・・・と情けない会社です。
書類って自己満足のことが多くないですか?そんなものに一生懸命時間をかけて、結局意味のないことがほとんどです。ペーパーレスのこの時代、うちの会社も牛歩的に動いては居ますがまだまだです。どれだけ資源はもちろん、時間も無駄にしていることやら・・・。
会議については、数多くの書籍などで、「長い会議ほど無駄なことはない」というような情報を目にしたことがあり、私も心からそう思います。でも、「無くす」までは考えませんでした。でも、確かに会議も紙と一緒で、「自己満足」の世界なのかもしれませんね。みんな好きじゃないでしょうし、集める人の自己満足の域を出ないでしょう。
松本会長が言うには、「やっていい会議もありますが、開くには条件があります。」とのこと。大切なのは、
- 1)インフォメーション(情報)
- 2)エデュケーション(教育)
- 3)ディシジョン(決定)
1は、ある人が持つ情報を他の人に伝えること。2は、会議に出たら何かしら勉強になるということ。3は、会議を開いたら何か決めないといけない。
ということだそうで、3が一番大事だそうです。基本の「キ」ですよね。
そして次の話がまた面白いし納得なんです。会議を減らすのに一番効果があったのは、会議室をなくしたこと。その分、ほかの用途にスペースが利用できますよね。私はハッとしました。ここでもうちの会社の問題が浮き彫りになりました。うちは会議室を逆に「増やして」いますからね。無駄を増やしていることと同じですよね・・・。みなさんの会社には会議室はありますか?たくさんありますか?
■いらない業務、現場の声で洗い出す
彼は会社の無駄を現場の声からヒアリングするため、CEOに就任して1週間後にワークショップを開催しました。すごい行動力ですよね。年とともに行動力は下がるなあと実感している私には尊敬しかありません。。そこには幹部や若い人合わせて60人くらいが集まり、都内のセミナーハウスを借りて、1泊2日で開催されました。
ワークショップというのは、みんなで一緒になって考える、コミュニケーションをとる場。彼は、ミーティング(会議)とは区別していました。オフィスで開催してしまうと、どうしても手がけている仕事が気になってしまい、効率的じゃないので開催しなかったそうです。
ワークショップの目的は、業務の棚卸しと仕分け
会長は次のようにヒアリングを行いました。
初日の午前中は、会社の「よいところ」を聞きました。僕はカルビーのことを知らないから、よく知っている人に話してもらった。その年、カルビーはちょうど創業60年、人間でいえば還暦を迎えていました。みなさん、昔のことをまるできのうのことのように生き生きと話された。これもよかった、あれもよかったと。商品の話、北海道を中心とした契約農家さんの話、物流の話などを聞いて、なるほど立派な会社だと思いました。
その日の午後には「いいことだけど、まだできていないこと」を聞きました。たとえば、新商品の開発が遅れているとか、スナックは好調だけど、それ以外はあまり成長していないとか。そのなかには、後に売上高300億円規模の商品に育った「フルグラ」もありました。いい商品だけど売れていない、ということですね。そういういろいろな意見を聞いて、初日は終了です。
■新商品の不振、マーケティング不全から
そして、会長は2日目には下記のようなヒアリングを行いました。
次の2日目が、僕にとってはヤマ場でした。午前中に今やっている業務の中で無駄なことは何か、みんなで議論しながら一つずつ洗い出しました。意見が一番多かったのが会議、次が書類でした。これは思った通りで、ほかにもいろいろ出てきました。ただ、一度にあれもこれもやめるというのは、さすがに難しい。
それでその日の午後、急いで廃止すべきだと思ったものに絞って「今日からやめる」と言い渡しました。会議と書類の廃止は、こうやって決まったんです。この業務の棚卸し、仕分け作業は、その後も年に2回のペースで続けました。
素晴らしいの一言ですね。これは家庭など会社以外でも本当にオススメなんです。「思ったらすぐやる」「思い立ったらすぐ行動」。私の尊敬するホリエモンも仰っております。しかしですよ、これを会社のトップが言う会社ってなかなか無いと思うんですよ。本当にかっこいいし、素晴らしいと思うんです。即決力・決断力、これぞ経営者だと思います。この人と一緒に働きたい!って思えますもん正直。
さて、続きです。
商品も、いらないと思ったものはどんどん生産を止めるよう指示しました。会社というのは、新商品と称して、物をいっぱいつくりたがるものです。開発の人たちは、仕事だから新商品をどんどん生み出す。でも、つくっても思うように売れない。そうするとテレビコマーシャルなどのプロモーションをやる。つまり販促にカネをかける。それでも売れないと、また新しい物を作る。いらない商品がどんどん増えて、気づいたら無駄が多くなっているんです。
マーケティングの基本、古典として「マーケティングの4P」というのがあります。だめな会社というのは、プロダクト(製品)とプロモーション(販売促進)の2つのPばかり繰り返し、残りのプライス(価格)とプレース(流通)はほとんどやらない。理論上は4つのPを上手に組み合わせたらうまくいくはずですが、腕がよくないマーケターは前の2つのPしかみないから、うまくいかないんです。商品を減らしたのには、そういうマーケティングの基本を知ってもらう目的もあったんです。
会社版の断捨離、経営者にはぜひ考えてほしいものです。みなさんも、転職する際や、就職する際には、経営者の方の考え方や社訓などをチェックしたほうがいいですよ。
もっとも、それが絵に描いた餅になっているうちのような企業もありますが、見ないよりは見たほうがいいなってすごく思います。
それに、今の時代は、この松本会長のように、実際のインタビュー記事なども出ている経営者の方もたくさんおられます。そういったところで、興味ある企業の情報収集をすることも非常にお勧めです。生の意見や考えが無料で知れるわけですからね。情報を制する者は就職を制す、です。
コメントを残す