はじめに
コロナ禍による経済停滞が深刻化しています。
多くの企業が極端に経営状況を悪化させていますが、
その影響は働く私たちにもすぐやってきます。
何が起きるのかをあらかじめ知ることで、打てる対策があるかもしれません。
いきなり解雇はむしろ従業員のため?
2月末日で北海道のバス会社が営業を休止しました。
観光バスがキャンセルされるだけでなく、学校の休校でスクールバスも停止したためということです。
10人の運転手は同日付で解雇されたのですが、実はこれは運転手のためでもあったのではないか、と言われています。
というのも、会社都合で退職した場合、失業保険がただちに支給開始されるからです。
実際には7日間の待期期間+振り込みまでの期間が3週間ほどあるので支給される日は1カ月後です。
また金額も後述しますが、多く支払われるわけではありません。
けれども、給与を払えない状況で無理に雇用し続けているよりは従業員の助けになるかもしれない。
そんな判断がされたのでは、という推測です。
失業給付金は月給30万円以上でほぼ一律
では失業給付金額はいくらくらいになるのでしょう。
ハローワークのホームページを見てもよくわかりにくいかもしれません。
そこで30~44歳の人を対象に、ざっくりとした基準として、月給10万円と30万円という境界を示します。
まず月給10万円までですが、ここまでの給与の人の給付率は80%です。
減額幅は小さいのですが、元が多くないので金額は大きくありません。最大でも8万円ほどです。
そこから30万円までは、給付率が下がっていき、30万円で50%になります。
30万円ちょうどだった人には、約17万円の金額が支給されます(月30日としての概算)。
さて、30万円を超えた人ですが、ここからは定額になります。
なぜなら1日あたりの給付額上限は7570円だから。
つまり、月給30万円以上の人は、額がいくらであっても23万円弱がもらえる上限ということです。
この上限額は年齢によって違うのですが、一番増えるのは45~59歳で、1日当たり8335円です。
月額で約25万円。逆に30歳未満では、6815円に減るので、20万円強です。
これが解雇された際の最後のセーフティネットですが、そのことを理解した上で、コロナショックに基づく私たちの給与への影響を整理してみましょう。
この先に来る給与クライシス
さて、いきなり解雇、という事態に陥らないまでも、働く私たちに影響をおよぼす事柄はいくつもあります。
すぐに考えつく代表的なものでも4つほど。これらについて整理して説明します。
1.勤務時間の縮小
北海道のバス会社は、仕事がまったくなくなったから解雇せざるを得なくなりました。
そこまで一足飛びでなくとも、多くの会社で仕事が減少しています。
そこで経営者はまず、緊急性のない人件費を減らそうとします。
その最たるものが「残業代」です。
だからまず始まるのは、残業の削減であり、具体的には残業承認制度の強化です。
仕事が忙しいから残業しました。その分の残業代をください、というふうに働く側としては思うのですが、経営層はそれに対して「先に申請してないんだったら払いませんよ」という仕組みを徹底するということです。
これは法的には正しい取り組みです。ただ、それまで従業員の意志で残業ができていたのに、いきなりそれが変わる、というのでは面食らうこともあるでしょう。
また、本当に残業しなくてよいのならともかく、仕事が減らないのなら結果としてサービス残業が増える可能性が高まります。
一番許せないのが、生活残業。
金稼ぎのために時間を無駄にして残業する輩です。
勤務先にもいますが、仕事が無くなって困っている人がいるから尚更許せません。
何を考えているんだと。
3月という今の時期を踏まえて考えてみると、経営層が次に考えるであろうことは、昇格の延期だと思われます。
通常、3月決算の会社の場合、4月に昇格が行われます。
昇格とは平社員が主任や係長になったり、係長が課長になったりすることです。ほとんどの場合、出世=昇格と言ってもよいでしょう。
これがなぜ4月に行われるかというと、新しい体制で事業年度をはじめるためです。
そして新年度の事業計画を強力に推進してゆくので、そのための体制として新管理職などの役職者を決定します。
けれども、この昇格が遅らせる可能性があります。
なぜなら、昇格をすると通常は給与が大幅に増えるからです。
役職が1段階あがることで、少なくとも数千円。通常は2万~10万円ほど昇給します。
これが経営にインパクトを与えてしまうので、昇格を延期する可能性があるのです。
3月決算の会社の場合、4~7月くらいに昇給が実施されます。
より厳密に言えば、評価結果によって昇給しない人や、減給になる人もいるので、昇給ではなく給与改定ということが一般的になりつつあります。
そして、この昇給タイミングを遅らせる企業が増える可能性があります。
昇給については、実は新卒から定年まで人材がそろっている会社では、大きな人件費増にはなりません。
あたかもところてんのように、全年齢層で昇給し、最上位の年令の人が定年し、若い新卒が入ってくる構造が成立していると、理論的には総額人件費は増えないからです。
ただ実際にはきれいなところてん構造になっている会社はほとんどないので、総額人件費は昇給の都度、変動します。
そしてその総額人件費が増える計算になる会社では、昇給そのものを延期する可能性があるのです。
私たちの給与に最もインパクトを与える変動は、賞与の大幅減額です。
具体的な発表はこれから続くのですが、インバウンド減少の影響だけでも「観光」「外食」「輸送」「エンターテインメント」「衣類・アクセサリー」「フィットネス」「化粧品・スキンケア」などの業界で大幅な業績悪化が進みます。
また中国からの原料・材料が届かなくなったことで多くの「自動車メーカー」「住宅メーカー」「電機メーカー」などでの製造ラインが止まっているという話もあります。
また教育産業でも大きな影響が出ています。
「学習塾」「セミナー会社」などは売り上げの多くを3月から4月に稼いでいるので、売り上げの落ち込みはかなりの割合になります。
そうして、必ずしも支給が義務付けられていない日本独特の賞与制度は、経営悪化時のバッファーとして強く機能するでしょう。
伝え聞くところでは、すでに夏の賞与支給をゼロにする決定をした会社も数多くあります。
強制的な構造改革が劇的に進んでいる
このような極めて厳しい状況に対して、私たちは悲観的になって頭を抱えるしかないのでしょうか。
あるいは、消費を抑制して乗り切るしかないのでしょうか。
完全に対応できる答えはありません。
けれども、今起きている変化を少しでも前向きにとらえるための方法を考えることはできます。
それが、急激に広がるリモートワーク。真剣に考えるべきです。
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