まずは、こちらをご覧ください。あなたは、これを見てどう思いますか?
一、ストレスは「生きる幸せ」を感じさせるもの
二、ストレス反応である疲労は心身を守る「安全弁」
三、ストレスは休養とのバランスがとれることで「心の健康」につながる
これは、「ストレスの正体」と言われています。
「ストレス」は何かと悪者に思われます。「ストレス」という言葉を毎日最低1回は発する方も多いのでは?かくいう私もそうです。ストレスだストレスだと、発する回数はかなり多いほうです。電車ストレス、育児ストレス、仕事ストレス、キリがありません。ストレスが無い生活がしたいと心から思っています。
でも、実はストレスは一種の「必要悪」であり、「生きるためのマストアイテム」でもあるらしいのです。本日は、日本大学医学部精神医学系・内山真主任教授に取材し、ストレスの正体を探った記事をご紹介しながら、ブログを書いていきたいと思います。
ストレスのない人生は実は不幸せ?
内山教授によると、ストレスというのは今も昔も変わらず存在するものだそうです。そこで、教授が例を挙げたのが、スイスの山岳地帯。
『アルプスの少女ハイジ』の舞台にもなっているスイスの山岳地帯。一見のどかでストレスがなさそうに思えますよね。実際スイスは梅雨もなく、春夏は気候が穏やかで過ごしやすい場所のようです。一方、冬はとても寒く厳しい環境に一変します。それ以外の季節でも心配や懸念は多い。欧州では羊がオオカミに襲われる脅威などもあるので、夜はぐっすり眠るわけにはいかなかったという記録もあるんです。
そしてこれは、昔の日本でも同様ということです。夜は畑を荒らしにくるイノシシを撃退しなければいけなかったので、おちおち眠ってはいられなかったそうです。昔の人たちは、農業などで過酷な自然の脅威と闘いながら生きていたのです。つまり、この例を考えてみても、生きていくうえで心労、つまりストレスは昔からあったということになりますよね。
そして、内山教授は気になる質問を投げかけてきます。
「そもそも、『ストレスがない』ことが本当の幸せだと思いますか?」
あなたはどう思いますか?ストレス無い生活をしたくないですか?心労=自分を疲弊させる原因ですよね?
内山教授いわく、「より良く生きようと思うと現実とのギャップを感じます。何らかのストレスを感じるものです。反対に、『このままでいいんだ』と思うと、この落差はなくなるけれど、今度は生活の満足度が低くなってきます」 とのこと。
「生活の満足度」、というのは「幸せ」ということであり、それが、心の健康にも繋がるそうです。そして、また気になる質問を内山教授は投げかけます。
『やりがいのない仕事を機械的にこなすだけで、食べるには何とか困らない生活』
と、
『ちょっと大変なこともあるけれど自分の能力を生かした仕事で達成感がある生活』
どちらの満足度が高いと思いますか?」と。
それはもちろん、やりがいを感じられたほうが満足度は高いとのこと。あなたもご自分に当てはめてみれば分かりませんか?教授が以前に行った国内調査でも、その通りだったそうで、『達成感の高い人が心の面で健康』ということが分かったそうです。
ただ、『ストレスを避けなさい』というのはもちろん正しいこと。でも、それはあくまでも程度問題。ストレスをとことん避けたらそれだけ幸せなのかというと、必ずしもそうでもなさそうなのです。そもそも、みんなで協力しながら生きている実生活の中では、多少なりとも人に気を使うことが多いですよね。自分だけストレスが全くないというのは現実には難しいですよね。
では、そもそも「ストレス」について、どう考えたら良いとあなたは思いますか?
内山教授は下記のように語っています。
「私たちが『ストレス』と呼んでいるような心の負荷は、うまく乗り越えられた時にこのうえない達成感をもたらします。いわばストレスは『生きる幸せを感じさせてくれるもの』でもあるのです。そう考えると、『ストレスが全くない生活が理想的な心の健康状態』とは言えない気がしてきます。心の健康とは、ストレスによる疲れと、そこからの回復を行ったり来たりする中で得られる、もっとダイナミックなものだと思います」
言われてみれば分かる気がしませんか?でも、それでも私はストレスについては無い方がいいなあと思っています。仕事についてはまさに先ほどの例で言うと私の今の勤務先での仕事は、
『やりがいのない仕事を機械的にこなすだけで、食べるには何とか困らない生活』
です。言ってみれば、仕事上のストレスは少ない方かもしれません。でも、精神的に辛いのは事実です。
「自分は何のためにこの課にいるんだろう」
「いなくてもいいよな」
「無駄な時間だな」
「こんな誰でもできる仕事、代わりはいくらでもいるよ」
とか常々思っています。そういったストレスは結構あるんです。私が思うに、『やりがいのない仕事を機械的にこなすだけで、食べるには何とか困らない生活』のほうがただそれだけで単純に生活満足度が低いわけではないと思うんです。
こういった別の種のストレスが大きすぎて、それだけしかないと、その影響で満足度が低い、と私は考えています。だから私は満足度をあげるためにこうして副業をしております。業務中でも隙あらば副業をしております。それでその種のストレスが軽減され、満足度に繋がっていることは確かなのです。勤務先での仕事には目標も何もないので、別のところにそれを見出して、それに向かって頑張っているからです。
大事なのは、疲労と回復のバランス
でも、私もそうですが、内山教授もストレスでペシャンコに押しつぶされてしまいそうになることも少なくないそうです。ストレスが過剰だったり、うまく対処できなかったりすると、とても大変。
何事も中庸。何事もバランスが重要なんですね。私、この、「中庸」って言葉が大好きです。
内山教授によると、具体的にストレスとなる原因を減らす工夫も必要だそう。そして、さらに大切なのが、先ほどお伝えした『ストレスによる疲労と回復のバランスがとれる』ことだそうです。
当然のことながら、生物全般にとって最も強いストレスとは、生死に関わるものというのはあなたもお分かりですよね。そうした緊急事態では、そこから全力で逃げ出すか戦うかしか生き延びる術はありませんので、瞬発力が必要になります。そこで私たち生物は、強いストレスを感知、つまり非常事態を認識すると、まず何とかそれに打ち勝つべく瞬発的な力を発揮できるようにします。
具体的には、まず大脳辺縁系が働き、脳の視床下部、下垂体から次々指令が出て、副腎皮質でストレスホルモンであるコルチゾールがつくられます。これが血液中のブドウ糖を増やして血糖値を高め、瞬発的な力の発揮に必要なアドレナリン産生を一気に促します。非常事態に対し交感神経を高めて対処するわけです。そうなると、脈拍は高くなり血圧も上昇します。精神的にも高ぶった状態になるので、眠れなくなります
ストレスを感じると、ここまで体に大きな変化が表れるとは驚きですね・・・。文字に起こしてみると結構すごいことだと再確認できますよね。
内山教授曰く、
「とはいえ、これはあくまで緊急事態に直面した際の一時的な体の反応です。こんな状態が長く続くと、体は通常の状態をうまく保てなくなってしまいます。血糖値、脈拍、血圧まで高いままになってしまうと、健康面で破綻。精神的にも高ぶった状態が続いてしまうため、心の健康が保てなくなってしまうのです。」
「ですから、このように緊急事態に対する反応が起こると、次にこれを収束する働きが出てきます。ストレスホルモンであるコルチゾールが一定以上高い状態が続くとフィードバックがかかり、コルチゾール自体がこれを高める命令を出していた視床下部、下垂体の活動を抑えるので、平常の状態に速やかに戻っていくのです」
緊急事態で大きなストレスを感じても、体を壊さないようにいったん収束し、速やかに落ち着き回復するのが通常のメカニズムということらしいです。人間の体はよくできているものだと感心してしまいますよね。
そして、さらに内山教授いわく、
「重症の『うつ病』では、このストレスホルモンであるコルチゾールが夜になっても高いままで、うまく回復しなくなっているという報告もあります。つまり、うつ病により心の健康が保てなくなった状態とは、本来は緊急事態的な心身の反応の一部が続いている状態と解釈できるのです」
そういうことなんですね。ずっと緊張状態とは相当つらいですよね・・・。うつ病、甘く見てはいけません。そして、実際になった人を本当に軽く見てはいけません。本当に辛いものなのです。
では、スムーズに回復状態に戻すにはどうしたらよいのでしょうか。内山教授はさらに次のように語っています。
「ストレスで疲れることが続いても、私たちには回復する機能があります。『休養』です。私たちは1日の4分の1から3分の1は眠って過ごします。睡眠は休養のうちの『休』の部分として重要です。楽しみを積極的に得る、気分転換をするというのが休養のうちの『養』の部分。先ほど話題になったように『心の健康』とは、ストレスが全くないという現実離れした状態ではなく、『ストレスと休養、負荷と回復のバランスがとれた状態』なのではないかと思います」
疲れて休みたくなるのは心身の「安全弁」
「自分で疲労に気付くことが大切。常に100%元気でいるのは、長い目で見ると危険です。心身が疲弊してしまいます。患者さんや知人など、社会で頑張ってきた人たちと話をしていると、『世の中には頑張り屋、優秀な人がたくさんいるけれども、最後は体が丈夫でなくちゃ』という声が目立ちます。つまり、『無理をして頑張り続けたために途中で体を壊してしまい、第一線から遠のいていく人が多かった』というのです。困難やストレスに常に全力で立ち向かい走り続けていくことは、安全弁がうまく働いていないとも考えられるかもしれません」
なるほど、これはよくわかりますね。一言でいうと、
無理は禁物
ってことです。
「『疲労を感じる』ということは、心身を守る大切な『安全弁』なのだと思います。疲れると体を休めたくなるし、気持ちの面でも仕事を先延ばしにしたくなる。これが安全弁。疲労がなかったら、本当に体が壊れるまで気づきませんから」
安全弁である疲労を感じて休養すれば、回復できる。ストレスと休養による回復のバランスを保てる。これを繰り返すことが、心の健康につながるのだといいます。思えば、あなたも特にストレスを感じたときには家でグッタリとしてしまうことが多くないですか?
しかし、意志が弱いのは、必ずしも悪いことばかりではないそう。疲れているのに意志を強く持って何でもかんでも全力で取り組んでしまうと、結果的に健康を害すことになりかねません。自然にだらだらしてしまうのは体が求めているからということなんですね。まさに『疲れている時に働く体の安全弁』なんですね。
本当に目指すべきは「ストレス自体をなくすこと」ではなく、「ストレスを認識して、それとうまく付き合っていくこと」。ぜひ、あなたもストレスと休養とのバランスを見直しましょう。
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